欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/20

EU産業・貿易

域内39行が役職手当で賞与規制を回避、EBAが年内の是正を勧告

この記事の要約

欧州銀行監督機構(EBA)は15日、域内で活動する39の大手銀行が幹部行員にさまざまな形の特別手当を支給することで、賞与(ボーナス)の支給額を年間給与の最大2倍に制限するEUの規制をすり抜けているとの報告書をまとめた。E […]

欧州銀行監督機構(EBA)は15日、域内で活動する39の大手銀行が幹部行員にさまざまな形の特別手当を支給することで、賞与(ボーナス)の支給額を年間給与の最大2倍に制限するEUの規制をすり抜けているとの報告書をまとめた。EBAは該当する銀行に対し、12月31日までに賞与規制に沿って報酬制度を是正するよう求めると共に、各国当局に対して必要な措置を講じるよう勧告している。

EUでは今年1月、EU域内に本社や現地法人を置くすべての銀行の取締役、上級管理職、トレーダーなどを対象とする賞与規制が施行された。ボーナスの支給額を原則として年間給与と同額に制限するという内容で、株主の承認がある場合は年間給与の2倍が上限となる。2014年の業績に基づいて支払われる来年のボーナスから適用される見通しだが、世界有数の金融センターを抱える英国は最後まで規制の導入に反対し、昨年9月には欧州司法裁判所に規制の無効化を求める訴えを起こしている。

こうした中、英銀大手バークレイズやHSBCホールディングスをはじめとする大手銀行は、賞与規制に伴う人材流出を防ぐため、給与とは別に規制対象とならない定額報酬として諸手当を支給している。EBAはこうした慣行を問題視した欧州委員会の要請を受け、実態調査を進めていた。

報告書によると、39行は幹部行員に「役職に連動する手当」を支給している。銀行側は職務や勤務年数などに基づく役職ベースの報酬はボーナスのような能力給とは異なるため、固定給に該当すると主張しているが、EBAは固定給を「永続的で予め決められた、取り消し不可能ですべての従業員に対して透明な報酬」と定義。役職ベースの手当は大部分が「自由裁量的で取り消し可能」な報酬であるため、賞与規制の対象となる変動給に分類されるべきだと指摘している。

欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は声明で「規制の回避を目的とした報酬の導入は、他のセクターに対して銀行が金融危機から何も学んでいないとの好ましくないイメージを与えることになる。完全な規制の遵守が銀行システムの信頼と安定性を回復するための絶対条件だ」と強調している。