2015/1/7

総合・マクロ

ロシア経済危機、原因の最大3割は欧米に責任=プーチン大統領

この記事の要約

ロシアのプーチン大統領は12月18日、モスクワで開かれた年末恒例の記者会見でロシア経済の現況に言及し、現在の苦境は資源依存型経済に一因があると認めた。同時に、経済危機の理由の25~30%がウクライナ紛争に関連する制裁など […]

ロシアのプーチン大統領は12月18日、モスクワで開かれた年末恒例の記者会見でロシア経済の現況に言及し、現在の苦境は資源依存型経済に一因があると認めた。同時に、経済危機の理由の25~30%がウクライナ紛争に関連する制裁など「外的要因」によるものとして、改めて欧米諸国を批判した。また、危機に対する政府および中央銀行の措置は「正しい方向」にあると評価し、現在の経済政策を大筋で維持する姿勢を示した。今後の見通しについては、世界の景気回復で2年以内に原油価格が上昇し、ロシア経済も必ず成長すると話し、懸念の払拭に努めた。

会見でプーチン氏は、経済の多様化を図り、資源産業への依存を弱めるための改革が不十分だったとして、景気後退の一因がロシア自身にあることを認めた。その一方で、原油価格が上昇すれば国民経済も必ず成長すると述べ、2年以内に景気が上向くとの楽観的な見方を示した。景気回復までに資源以外の産業を強化して経済の安定性を高めるとしているが、これまで20年かけてもできなかった改革をどう実行するのか、具体面は不明なままだ。

対ウクライナ政策に関しては、「ウクライナ東部とロシアの政治的一体性を再生する」のが目標としたが、それが何を意味するか、詳細は明らかにしていない。ロシアの立場については、「自己を維持するという国民、文明、国家のごく自然な欲求」の現れであるとして自らの対外政策を弁護した。大統領の見方によると、欧米諸国はすでに1990年代の早い時期から新たな「ベルリンの壁」を築きはじめ、「自らが勝者・帝国であり、他の国はその家臣に過ぎないという決まり」を作った。そして、ロシアをクマに喩(たと)え、「欧米はクマを鎖につなぐために牙を抜き、爪を短くしよう(=保有する核兵器を減らそう)としている。これを許せば、クマは殺されて剥(はく)製となり、その縄張り(=領土)は(欧米に)分けられてしまう」と警鐘を鳴らした。ロシア国民の選択肢は「ロシアの独立を維持して問題を自ら解決するか、(敵の居間を飾る)クマの皮になるか」だとして国民の団結をよびかけた。

欧州連合(EU)は12月16日、事実上ロシア領となっているクリミア半島に対する制裁を強化したばかりだ。観光船の寄航を含め、欧州企業による投資を禁止するほか、石油・ガス採掘設備の禁輸措置を発動した。

なお、アレクセイ・ウリュカエフ経済相は現地経済紙『ベドモスチ』の取材で、ロシアの景気悪化を深刻なものととらえ、国民の生活水準は低下すると予想した。また、その根源は改革を先送りにしてきたロシアの政策にあり、現在の政府も実効性のある戦略が立てられないでいると指摘した。プーチン氏の楽観的な発言と温度差がみられる。

昨年のロシア国内総生産(GDP)は0.7%増とわずかながらもプラスを記録したもようだ。失業率は5%と比較的低く、賃金・年金の増額、農産物の大豊作というよい面もあったが、原油相場の急落にともない通貨ルーブル安が急進し、中銀の大胆な利上げでも低下傾向を食い止められずにいる。

中銀は原油価格が1バレルあたり60米ドル前後で推移すれば、ロシアの15年国内総生産(GDP)が5%近く縮小すると予測している。