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2015/3/25

ゲシェフトフューラーの豆知識

アルコール依存症患者が再発で病休、給与支払い義務はあるか?

この記事の要約

被用者が病気になった場合、雇用主は最初の6週間、給与を支給しなければならない。これは「祝日および病欠時の給与支払いに関する法律(略:EntgFGないしEFZG)」3条1項第1文に定められたルールである。ただし同第1文には […]

被用者が病気になった場合、雇用主は最初の6週間、給与を支給しなければならない。これは「祝日および病欠時の給与支払いに関する法律(略:EntgFGないしEFZG)」3条1項第1文に定められたルールである。ただし同第1文には、被用者が故意・過失で病気になった場合は雇用主に給与の支払い義務がないことも明記されている。では、アルコール依存症の治療を受けた被用者が再発した場合、雇用主はこれを過失と見なし、給与の支払いを拒否できるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が18日に判決(訴訟番号:10 AZR 99/14)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はアルコール依存症が再発した被用者Lの加入する公的健康保険組合が、Lの雇用主を相手取って起こしたもの。Lは2011年11月23日、飲酒によるこん睡(血中アルコール濃度4.9パーミル)で病院に運ばれた。それまでに依存症の入院治療を2度、受けていた。

原告・公的健保組合は11月29日からLが退社する12月30日までの給与を立て替えて支給したため、被告企業に支払いを請求。これが拒否されたため、提訴した。被告の立場は、何度も治療を受けたにもかわらず再発したのはLの過失であり、自らに給与支払いの義務はないというものだった。

原告は1、2審で勝訴。最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、アルコール依存症は再発も含めて原因が多数あるうえ、それらの要因は相互に影響しあっていると指摘。再発の責任が被用者にあるケースもあるが、再発の原因が明確でないケースもあると述べ、そうした後者のケースでは雇用主に給与支払いの義務があるとの判断を示した。

そのうえで、Lのケースに関してはLに過失がないことが社会医学鑑定で証明されており、被告は原告組合が肩代わりした給与を同組合に支払わなければならないと言い渡した。

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