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2015/12/16

総合 - ドイツ経済ニュース

エンジン制御ソフトの開示義務化、交通省が検討

この記事の要約

自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を受けて、対策を講じる動きが出てきた。不正を防ぐ有効な手立てを打ち出さないと、自動車と型式認定制度に対する消費者の信頼が揺らぎかねないためで、ドイツ連邦交通省はエンジン […]

自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を受けて、対策を講じる動きが出てきた。不正を防ぐ有効な手立てを打ち出さないと、自動車と型式認定制度に対する消費者の信頼が揺らぎかねないためで、ドイツ連邦交通省はエンジン制御用ソフトウエアの開示を自動車メーカーに義務づけることを検討。量産車メーカーのオペルは現行の規制基準よりも厳しい燃費・排ガスの検査方法を採用する。

エンジン制御ソフトの開示義務化は、VW排ガス不正問題の解明に向けて設置された調査委員会が他の対策案とともにまとめ上げた。日曜版『ビルト』紙が報じ、ドブリント連邦交通相が追認した。

VWグループでは違法なソフトを使ってディーゼル車の排ガス値を操作していたことが9月に発覚した。該当する車両は世界で計1,100万台、ドイツで240万台に上る。

ドイツではこれまで、型式認定を請け負う技術監査会社がエンジン制御ソフトを検査することが法的に認められていなかった。同監査業界は型式認定の検査対象にエンジン制御ソフトも加えるよう政府に要求してきたが、自動車業界は、同ソフトは企業秘密であり監査会社であっても中身を見せることはできないと拒否。政府も自動車業界のこうした主張を受け入れてきた。

だが、排ガス不正問題の調査委員会はこれが不正を生む大きな原因の1つになったと判断。型式認定の管轄当局である連邦陸運局(KBA)に同制御ソフトを開示することを、自動車メーカーに義務づけることを提言する。同委はこのほか、◇型式認定検査の委託先となる技術監査会社を定期的に変更することを自動車メーカーに義務づける◇技術監査の結果に対し国の機関が追検証を行う――も提言するという。

オペルは15日、新車の排ガス性能を測定するための方法として現行の「新欧州ドライビングサイクル(NEDC)」に加え、来年第2四半期から、実際の走行に近いデータが得られる「世界統一試験サイクル(WLTP)」も任意で採用すると発表した。NEDCで得られる排ガス値は実際の走行で得られる数値を大幅に下回り、これが排ガス性能に対する不信を生んでいることを反省。欧州連合(EU)で2017年に導入見通しのWLTPを自主的に前倒しで採用し、消費者の信頼感を獲得する考えだ。

オペルはまた、◇欧州排ガス規制「ユーロ6」に対応したディーゼル車の排ガス処理で今後は主に、性能とコストがともに高い「SCRシステム」を採用する◇SCR技術を改良し来年夏から製品に反映させていく――ことも明らかにした。

「CO2排出量で不正なし」=VW

一方、VWは9日、同社製車両の二酸化炭素(CO2)排出量で不正があったとする問題の調査結果を発表し、不正はなかったとする新たな見方を示した。一部のモデルでCO2排出量が型式認定を受けた際の数値(カタログ値)よりも高いものの、その差は小さく不正に当たらないとしている。該当車両の数についても当初示していた台数から大幅に引き下げた。

VWは11月上旬、窒素酸化物(NOx)排出不正操作の発覚を受けて開始した内部調査でCO2の不正も明らかになったと発表。該当車両は合わせて約80万台に上るとしていた。

今回の発表では該当する車両数を年産台数ベースで3万6,000台へと大幅に下方修正した。モデルもVWブランド乗用車の9車種にとどまるとしている。

同社によると、これら9車種で走行100キロメートル当たりの燃料消費量をNEDCで新たに測定したところ、カタログ値とのズレは0.1~0.2リットルと小さかった。このためCO2排出量のズレも小さく、VWは違法性がないと判断した。

同社はこの問題をカタログ値の修正で対応できるとみている。このため、当初はリコール(無料の回収・修理)などの対策に計20億ユーロのコストが発生すると予想していたが、同コストの計上を回避できる公算が高まってきた。VWは年内に当局の監督のもとで中立の技術監査機関の検査を受け承認を獲得する考えだ。

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