欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/1/19

EUその他

アマゾンに対する税優遇措置、欧州委が「違法な国家補助」と暫定判断

この記事の要約

欧州委員会は16日、ルクセンブルクが米アマゾンに適用してきた税優遇措置について、EU法で禁止している違法な国家補助に該当するとの暫定的な見解を示した文書を公表した。これは欧州委が昨年10月に本格調査を開始した際、アマゾン […]

欧州委員会は16日、ルクセンブルクが米アマゾンに適用してきた税優遇措置について、EU法で禁止している違法な国家補助に該当するとの暫定的な見解を示した文書を公表した。これは欧州委が昨年10月に本格調査を開始した際、アマゾンに送付していたもの。ルクセンブルクによる課税措置が最終的に違法と判断された場合、アマゾンは該当する金額を返還する必要がある。

多国籍企業の課税逃れに対して国際的な批判が高まるなか、欧州委は企業誘致や雇用創出などの見返りとしてルクセンブルク、アイルランド、オランダ政府が適用してきた租税軽減措置が違法な国家補助にあたる可能性があるとして、昨年6月から本格調査を進めている。ルクセンブルクの税優遇措置をめぐっては、米ワシントンに本部を置く調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が11月、政府が02~10年にかけて世界の大手企業340社以上との間で秘密の取り決めを結び、極めて低い税率を適用していたとの調査結果を公表。この間に同国の首相を務めていた欧州委のユンケル委員長に対し、企業の課税逃れに加担したとして厳しい批判の目が向けられている。

欧州委は公表した文書で、ルクセンブルク政府とアマゾンが2003年11月に結んだ税務上の取り決めが違法な補助金にあたるとの見方を示している。同委によると、アマゾンのルクセンブルク子会社LuxOpは欧州本社の機能を果たしており、欧州各国のウェブサイトを運営している。LuxOpはアマゾングループ全体の売上高の約4分の1(13年は約136億ユーロ)を計上しているが、同社はルクセンブルクの別会社LuxSCSに知的財産の使用にかかるロイヤリティーを支払っており、これによって課税額が大幅に抑えられている。

欧州委はこのロイヤリティーについて「生産や販売活動と関連性がない」とし、「移転価格税制を利用して課税額を低く抑える」ため、ロイヤリティーを「過度に高く設定していた」可能性があると指摘。支払いの対象になっている知的財産の性質やこれまでに支払われた金額など詳細情報の提供を求めている。欧州委はまた、税務上の取り決めが「アマゾンの申し入れからわずか11営業日」で承認されている点に着目し、当局が十分な審査を行ったか疑問が残ると指摘。さらに、一連の取り決めが10年以上にわたり、一度も見直されることなく適用されてきた点も問題視している。

こうしたなか、欧州議会では欧州委とは別に、多国籍企業に対する税優遇措置について独自に調査を行う臨時調査委員会の設置に向けた動きが本格化している。欧州緑の党によると、14日までに調査委の設置要求に必要な全議員の4分の1以上の署名が集まっており、各会派の代表に最終判断が委ねられることになる。欧州委は競争法の観点から、特定の企業に対する優遇措置がEUの国家補助規定に違反していないかどうかに焦点を絞って調査を進めているが、欧州議会ではより広範な視点から調査を行う必要があるとの声が出ており、ルクセンブルクで長年首相を務めたユンケル欧州委員長をはじめとする加盟国の首脳陣や、優遇措置を受けた世界的企業の経営トップが召喚される可能性もある。