欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/8

EU産業・貿易

欧州委と独通信当局が対立、ターミネーション料規制めぐり

この記事の要約

携帯電話事業者が他社のネットワークに回線を接続する際に支払う「モバイル・ターミネーション・レート(MTR)」をめぐり、欧州委員会がドイツの通信当局に対する批判を強めている。ドイツでは他のEU諸国に比べてMRTが80%近く […]

携帯電話事業者が他社のネットワークに回線を接続する際に支払う「モバイル・ターミネーション・レート(MTR)」をめぐり、欧州委員会がドイツの通信当局に対する批判を強めている。ドイツでは他のEU諸国に比べてMRTが80%近く高い水準になっているため、欧州委はくり返し是正を求めているが、独当局はコスト面を理由に大幅な引き下げには応じない姿勢をみせている。このためアナリストの間では、欧州委が近く法的手続きに入るとの見方も出ている。

事業者間で決済されるMTRは国によってばらつきがあり、EU平均が1分当たり約0.01ユーロであるのに対し、ドイツでは2倍近い0.018ユーロとなっている。欧州委はEU域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング(相互接続)料金と同様、MTRが全体として携帯電話の通話料金をつり上げ、公正な競争と単一市場の実現を阻害しているとして、各国当局に実際のコストを基に料金を設定するよう求めている。

4日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、欧州委は独連邦ネットワーク庁(BNetzA)に対し40%近いMTRの引き下げを求めていたが、同庁が3日にまとめた計画案では4%の引き下げにとどまっている。市場では英ボーダフォンやスペインのテレフォニカをはじめとする域内の大手携帯電話事業者が今年12月以降、MTRを現行の水準に比べて3割以上引き下げるとの見方が出ているが、BNetzAが計画案を実行した場合、ドイツでは向こう2年間にわたり現在とほぼ同じ料金水準が維持されることになる。

BNetzAは料金体系の見直しにあたり、欧州委の異論を「最大限に考慮」したと強調。そのうえで、新料金は「携帯電話事業者が効率的にサービスを提供するためのコストを反映した水準」と説明している。しかし、欧州委の担当者はFT紙の取材に対し、「ドイツ側が計画を見直さなない場合、それは事実上の宣戦布告だ。彼らはEU内における合意の精神に反していること、さらにEU法に抵触する可能性があることも十分に理解しているはずだ」と述べ、独当局の対応を強く非難している。