2012/4/18

コーヒーブレイク

大統領が博士論文盗用~ハンガリー

この記事の要約

博士論文の盗用疑惑が浮上したハンガリーのパール・シュミット大統領(69)が2日、辞任した。215ページ中、197ページが他の研究者の著作を書き写したものとして博士号をはく奪され、オルバン首相率いる政権党「フィデス」の中で […]

博士論文の盗用疑惑が浮上したハンガリーのパール・シュミット大統領(69)が2日、辞任した。215ページ中、197ページが他の研究者の著作を書き写したものとして博士号をはく奪され、オルバン首相率いる政権党「フィデス」の中で留任に反対する声が強まっていたためだ。ただ、シュミット大統領は論文が「当時の規準を満たしていた」とし、博士号はく奪を不服として法的措置を取る姿勢を示している。

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この問題は、現地週刊誌『HVG』が今年1月、大統領が1992年に提出した近代オリンピックに関する博士論文の大部分が、ブルガリアの研究者、ニコライ・ゲオルギエフ氏の著作を書き写したものだったと報じたことが発端となった。

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博士号を付与した体育大学の後継であるブダペストのゼンメルヴァイス医科総合大学は、論文を改めて審査した。3月27日に、論文215ページのうち、ゲオルギエフ氏の著作内容を部分的に書き写したものが180ページ、ドイツのクラウス・ハイネマン氏の著作の丸写しが17ページを占めるとの結果を発表した。ただ、形式上は当時の要件を満たしており、論文の指導・評価に当たった教官の手落ちと判定した。

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それでもやはり博士を名乗らすのは問題と思ったらしく、同大理事会は29日に称号をはく奪する決定を下した。

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シュミット大統領は当初、「19年前の博士論文と、2010年の大統領選出は無関係」として留任の意向を示し、オルバン首相も支持の姿勢を崩さなかった。ただ、国民や野党だけでなく、与党からも異論が出たため、「大統領は国民を一つにまとめるのが職務だが、私の個人的な事柄で国内が対立している」として辞任に踏み切った。

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フィデスは16日、後任として1988年のフィデス結成時からの党員であるヤーノシュ・アーデル欧州議員(52)を候補とすることを決定した。政策的に立場が近い同氏を大統領に据えることで、自らの陣営を固めようとするオルバン首相の判断だ。与党が議席の3分の2を占めるため、来月2日に議会で正式に選出されることは間違いない。

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アーデル氏は1998~2002年の第1次オルバン政権で国会議長を務めた。就任時の年齢は39歳で過去最年少だった。2002~06年には野党となったフィデスの院内総務、02~03年には暫定的にフィデスの党首も務めた。

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一方、ゼンメルヴァイス大学のトゥラシャイ学長も1日に辞任した。博士号はく奪の決定後、自分の「人物」に対する国家人材省の信頼が「消え去ったことがはっきり感じられた」ことを理由としている。フィデスに都合の悪い判断の責任を取らされたというところだろうか。学術の中立も危ぶまれる。

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