2011/7/13

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

スロベニア財政に危機感高まる

この記事の要約

スロベニアの財政に対する懸念が高まっている。同国は欧州連合(EU)の新規加盟国として初めてユーロ導入を果たすなど、「優等生」と見られてきたが、急速な財政状況の悪化により、ギリシャのような「問題児」に転落する可能性も指摘さ […]

スロベニアの財政に対する懸念が高まっている。同国は欧州連合(EU)の新規加盟国として初めてユーロ導入を果たすなど、「優等生」と見られてきたが、急速な財政状況の悪化により、ギリシャのような「問題児」に転落する可能性も指摘されている。

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スロベニアは世界金融危機で経済に大きな打撃を受け、2009年の国内総生産(GDP)は前年比で8.1%も縮小した。翌10年も1.2%の成長にとどまり、危機からの回復が遅れている。今年の財政見通しは、財政赤字が対GDP比で5.8%、政府債務が同42.8%となっており、債務危機の渦中にあるギリシャやポルトガルなどと比べると、深刻な事態には陥っていないように見える。しかし、07年には財政赤字比率は0%、政府債務比率は23%だったことを考えると、財政悪化は急速に進んでいるといえる。ウィーン国際経済比較研究所のアナリスト、ヘルミーネ・ビトビッチ氏は、「問題は財政悪化のペースが速いことだ」と指摘する。

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パホル政権は景気回復が進まない中で公共支出削減に苦慮している。財政健全化に向けた支出削減策の目玉として提出した年金改革法案は先月の国民投票で否決された。財務省は、財政の持続可能性を維持するためには4億4,500万ユーロの即時削減が必要だとしているが、これを実現するためには補正予算を成立させる必要がある。しかし、パホル首相の与党社会民主党は下院定数90議席のうち33議席しか確保しておらず、補正予算を通すことは困難だ。経済紙『ファイナンス』の調査によると、いま総選挙が実施された場合にどの政党に投票するかという問いに対し、与党に投票すると答えた人は15%、最大野党の民主党(SDS)と答えた人は32%に上った。国民の支持を失う中で厳しい財政改革を行うのは困難であり、ビトビッチ氏は「政治が行動することを一番求められているこの時期に、スロベニアは苦悶の中に沈んでいる」と評している。

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■フィッチは格付け見通しの引き下げを検討

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格付け会社フィッチ・レーティングスは8日、ロイター通信に対し、スロベニアが持続的な財政再建策をとらない場合、今秋にも同国の信用格付けの見通しを「ネガティブ」にする方針を明らかにした。スロベニア政府は財政赤字の対GDP比を2013年末までに3%以下に抑えることを目指しているが、年金改革の失敗や少数与党のパホル政権の指導力低下で、実現が危ぶまれている。

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