2015/5/27

コーヒーブレイク

品質は日本産に匹敵~ブルガリアの養蚕業

この記事の要約

ブルガリア中南部の村、ドラゴイノヴォで伝統産業の復活に燃える男がいる。プログラマーのフリスト・マノヤンさん(33)がその人。なんと、日本人にもなじみの深い「養蚕業」をよみがえらそうというのだ。 プロヴディフの東に位置する […]

ブルガリア中南部の村、ドラゴイノヴォで伝統産業の復活に燃える男がいる。プログラマーのフリスト・マノヤンさん(33)がその人。なんと、日本人にもなじみの深い「養蚕業」をよみがえらそうというのだ。

プロヴディフの東に位置するポルヴォマイ地域は、気候に恵まれた豊穣の地。マノヤンさんの一族はこの地域のドラゴイノヴォ村で、多くの隣人と同じように幾世代にもわたって養蚕を営んでいた。しかし、曽祖父の代に社会主義化で国に土地を奪われ、祖父が15歳のときに首都ソフィアに引っ越さざるを得なくなった。マノヤンさんもソフィアで生まれたが、1990年代に家と土地が返還されたのを機に、家族と共に父祖の地へ戻った。

プログラマーとしてひとり立ちし、スペインでも数年働いた。しかし街中の生活に疲れ、「静けさ」を求めて帰郷した。

「養蚕復活」への準備は始まっている。すでに3.5ヘクタールの農地に桑の苗木を7,000本植えた。必要資金50万ユーロの調達の目処が立てば、さらに4ヘクタールが桑畑になる。トラクターを買い、養蚕棟も建設する。資金の6割を欧州連合(EU)からの助成でまかない、残りは投資者を見つける意向だ。

うまくいけば2017年から繭(まゆ)を年間11トン(生糸2.5トンに相当)生産できる。また、冬は蚕棚でマッシュルームを栽培する。

黒海・カスピ海・中央アジア養蚕協会(Bacsa)によると、ブルガリアは1950年から90年まで、最大で年2,000トンの繭を生産していた。欧州1位、世界でも8位の規模だったという。

しかし、2013年の生糸生産量は8.5トン、繭に換算すると46トンほどに縮小した。Bacsaでは養蚕業の復活で、ブルガリアが数年後には繭500トン、生糸70トンを生産できるようになると見込んでいる。

生糸生産では中国が13万トン、インドが2万7,000トンで世界をリードする(いずれも2013年の値)。マノヤンさんは、これらの低労賃国に対して「質で勝負」するという。ブルガリア生糸は「日本並み」の高品質で、競争力には自信があるようだ。