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2012/5/2

総合 - ドイツ経済ニュース

ドイツ経済の将来にトップエリート層が自信

この記事の要約

ドイツのトップエリート層が自国経済の将来に対し自信を深めている。独経済誌『キャピタル』の委託でアレンスバッハ世論研究所が政財官界の有力者510人を対象に3月に実施したアンケート調査によると、「ドイツは今後10年で技術的な […]

ドイツのトップエリート層が自国経済の将来に対し自信を深めている。独経済誌『キャピタル』の委託でアレンスバッハ世論研究所が政財官界の有力者510人を対象に3月に実施したアンケート調査によると、「ドイツは今後10年で技術的な主導権を握る」との回答が92%に達した。企業と政府がそれぞれ進めてきた構造改革の成果でドイツ経済の競争力がここ数年、急速に回復していることのほか、世界経済を今後、長期的に主導する産業分野で優位に立てるとの共通認識が背景にあるようだ。

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キャピタル誌は創刊50周年記念号(5月号)で「“メード・イン・ジャーマニー”は次の長期成長サイクルを支配する」と題する特集を組んだ。「コンドラチェフの波」という景気循環理論を援用し世界経済とドイツ経済の今後について論を展開している。

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コンドラチェフの波は20世紀前半のロシアの経済学者ニコライ・コンドラチェフが打ち出した景気循環理論。画期的な技術革新(イノベーション)が約50年続く長期の経済成長を作り出し、成長の勢いが弱まると新たなイノベーションが次の成長局面を創出していくとの立場をとっている。

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同理論によると、産業革命からこれまでに5つの大きな景気循環があった。最新の循環は情報技術(IT)がもたらしたもので、40年ほど前から続いている。

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このIT循環で優位に立ったのは米国企業で、まずはハードメーカーのIBMやインテルが主導。これにマイクロソフトやオラクルなどのソフトメーカーが急成長する曲面が続き、現在はアマゾン、グーグル、フェイスブックなどのネット企業が主導している。

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ドイツ企業もIT循環の恩恵を享受した。だが、世界的な意義を持つ同国のIT企業はソフト大手のSAP1社に限られており、その意味でドイツはIT循環時代の世界経済を主導してこなかった。

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コンドラチェフの理論に従うと、IT循環の時代はすでにピークを過ぎており、次の循環にバトンタッチするのは時間の問題となる。

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キャピタル誌によると、次の循環のカギを握るキーワードは「持続可能性」で、アレンスバッハ世論研究所のアンケートでも4分の3以上が支持した。

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コンドラチェフの波の研究で有名な経済ジャーナリスト、エリック・ヘンデラー氏によると、資源の節約、環境保護、健康な生活の3つが持続可能性の時代のカギを握るという。健康な生活を重視するのは、人口が減少する社会で経済成長を維持するには高齢者の活用が欠かせないためだ。

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資源の節約と環境保護は、新興国の経済が成長すればするほど重要になる。旧来の技術をベースに成長を続ければ、資源が枯渇し環境破壊も一段と深刻化するためで、「資源をより大切にしながらクリーンかつ健康に生産・消費する」ことが未来のトレンドとなる。

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中国への警戒感高く

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ドイツ経済がこうした分野で主導権を発揮できる理由をキャピタル誌は3つ挙げる。1つは国内に天然資源が乏しいため資源の有効活用に対する関心が伝統的に高いこと、もう1つはエコロジーに対する市民の関心が高いこと、3つ目は英国や米国と異なり競争力の高い製造業が健在であることだ。同誌は3番目の点にからんで、「巨大なサービスセクターを持ち長い間ドイツの手本と見なされてきた米国と英国は近年、これまで恐竜(旧時代の遺物)として過小評価してきた製造業の復興」に取り組もうとしていると指摘。ドイツが迷いながらも製造業を維持してきたことの意義を強調した。ドイツは新興国が必要とする省エネ・環境技術を提供できる立場にあるとしている。

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ただ、他国よりも先行していたはずの太陽電池や風力発電設備の分野では近年、中国企業の圧迫を受け、倒産する企業も出ている。アンケートでは「独製造業の今後10年の最大の競争相手国」を中国とする回答が79%に達し、米国の同7%、日本の2%を大きく上回った。

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