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2014/5/7

ゲシェフトフューラーの豆知識

年少の応募者の採用は差別か

この記事の要約

求人広告の応募者のなかで年齢が低い人を採用することは一般平等待遇法(AGG)で禁じられた高齢者差別に当たるのだろうか――。この問題をめぐる係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が4月に判決(訴訟番号:3 Sa […]

求人広告の応募者のなかで年齢が低い人を採用することは一般平等待遇法(AGG)で禁じられた高齢者差別に当たるのだろうか――。この問題をめぐる係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が4月に判決(訴訟番号:3 Sa 401/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はサービスエンジニアを募集する企業の求人広告に応募した50歳代の男性が同社を相手取って起こしたもの。同男性は求人条件の資格を持っていた。

同男性は自らの応募書類と、自分より18歳若い架空の人物を装った応募書類を別個に送付した。架空の人物の経歴は自分自身と似たように設定したものの、応募条件の1つとなっていた職業経験を行ってからの経過年月は自分よりも短くしておいた(選考上で架空の人物に有利に働く)。

被告企業は2つの書類を比べたうえで、架空の男性を面接試験に招待したところ、面接に応じないとの返答を受けた。原告に対してはその後やや時間をおいて、書類選考で不採用となってことを伝えた。

原告はこれを受けて、AGGで禁じられた高齢者差別に当たるとして提訴。最低1万500ユーロの慰謝料支払いを請求した。

1審のノイミュンスター労働裁判所は原告勝訴の言い分を認め、2,000ユーロの慰謝料支払いを被告企業に命じた。これに対し2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁は1審判決を破棄し、原告敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、年齢が若い応募者を選んだというだけでは差別に当たらないとの判断を示した。

また、架空の人物を装って求人に応募することはAGG法上、認められるものの、その場合は◇そうした行為を行う具体的な根拠がある◇刑法に抵触しないようにする◇権利の乱用を避ける――の3条件を満たしていなければならないと指摘。原告の場合はこれらの条件を満たしていない疑いがあるとの判断を示した。

最高裁への上告は認めなかった。