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2014/12/3

企業情報

エーオン(エネルギー)―従来型発電事業など分社化、南欧事業は売却―

この記事の要約

エネルギー大手の独エーオン(デュッセルドルフ)は11月30日、従来型発電(原子力、石炭、天然ガス発電)など3事業を分社化する方針を明らかにした。電力卸価格の大幅下落などを受けた措置で、今後は経営資源を再生可能エネルギー、 […]

エネルギー大手の独エーオン(デュッセルドルフ)は11月30日、従来型発電(原子力、石炭、天然ガス発電)など3事業を分社化する方針を明らかにした。電力卸価格の大幅下落などを受けた措置で、今後は経営資源を再生可能エネルギー、送電・送ガス網、顧客向けソリューションの3分野に絞り込む意向だ。同社は南欧事業からの撤退方針もあわせて明らかにした。

2016年に新会社を設立し、従来型発電、国際エネルギー取引、石油・ガス採掘事業を移管する。新会社の過半数株式をエーオンの株主に譲渡。残りの株式は市場で段階的に放出する意向だ。新規株式公開(IPO)の準備は来年にも開始する。新会社はエーオンの本社がある独西部のライン・ルール地方に設置する。

新会社は原子力発電所の廃炉と放射性廃棄物の保管に伴うコストを全面的に引き受ける。また、ルーブル安に苦しむロシア事業と、不採算のブラジル事業も抱え込むため、市場には同社をある種の「バッドバンク(不良資産の受け皿機関)」とみる向きもある。従来型発電で生産する電力は再可エネ電力を優先する政策のしわ寄せで採算が悪化しており、エーオンやRWEなどの発電大手は収益力が低下している。

エーオンのエネルギーミックスに占める原子力と火力発電の割合は合わせて64%に上る(グラフ参照)。再可エネは36%にとどまっており、同社の発電事業は大幅に縮小することになる。

エーオンは手元に残す3分野については事業を強化する意向で、来年は投資額を従来計画の43億ユーロから約48億ユーロへと引き上げる。特に欧州と欧州域外の一部の国で風力発電を拡充。また、太陽光発電と欧州・トルコの送電網の近代化(スマート化)にも資金を投じる。

14年は巨額赤字に転落、評価損で

スペイン、ポルトガル事業は豪マッコーリー銀行の欧州インフラファンド「MEIF4」に25億ユーロで売却する。イタリア事業についても売却を模索する。

エーオンは2008年、スペイン同業エンデサを買収しようとしたが抵抗を受けて失敗。その代わりとして、エンデサおよびエンデサの援軍に入った伊エネルから南欧事業の一部を計120億ユーロで譲り受けた。南欧事業は同地の財政・経済危機を受けて低迷し、巨額の評価損を計上しているため、エーオンは撤退する。MEIF4に譲渡する事業は発電能力が計4ギガワット、送電網が計3万2,000キロメートルで、顧客数は65万に上る。

同社は北海の石油・天然ガス採掘事業についても戦略的な措置を検討する。

エーオンはこのほか、14年通期の最終損益が巨額赤字に転落する見通しを明らかにした。分社化計画などを受けて資産価値の再評価を実施したところ、第4四半期に評価損45億ユーロを計上する必要性が判明したためで、通期の評価損額は約52億ユーロに膨らむことになる。

エーオンは11月28日には、米国の風力発電パーク2カ所の資本80%をカナダのエネルギー輸送・配給大手エンブリッジに売却すると発表した。債務を圧縮するとともに事業資金を確保する計画の一環。2パークの時価を計約6億5,000万米ドルと評価して取引を行う。取引の成立には独禁当局の承認が必要。

取引対象の風力発電パークはテキサス州ハーリンジェン近郊の「マジック・バレー(発電容量203メガワット)」とインディアナ州エルウッド近郊の「ワイルドキャット(同202メガワット)」で、ともに2012年に発電を開始した。合わせて12万世帯以上の電力需要を賄うことができる。