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2015/3/11

ゲシェフトフューラーの豆知識

年金受給後の継続雇用、有期契約に限定できるか?

この記事の要約

ドイツでは現在、65歳になると公的年金を満額受給できる。では、年金受給開始年齢に達した被用者が継続雇用を希望する場合、雇用主は有期雇用に制限することができるのだろうか。それとも契約期限のない無期雇用を義務づけられるのだろ […]

ドイツでは現在、65歳になると公的年金を満額受給できる。では、年金受給開始年齢に達した被用者が継続雇用を希望する場合、雇用主は有期雇用に制限することができるのだろうか。それとも契約期限のない無期雇用を義務づけられるのだろうか。この問題をめぐる係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が判決(訴訟番号:7 AZR 17/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は2010年1月21日に65歳となり、公的年金の受給が始まった被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。雇用契約には定年退職に関する取り決めがなかった。このため両者は同22日、雇用期間を12月末まで延長する有期雇用契約を締結。その後も契約を2度、延長した。最後の延長契約には雇用期間を11年8月1日から12月31日までとしたうえで、原告をあくまで補助要員として雇うと明記されていた。原告は12年以降も雇用するよう求めたが、拒否されたため裁判に踏み切った。

1審と2審は原告敗訴を言い渡した。一方、最終審のBAGは2審判決を破棄、裁判をベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所に差し戻した。判決理由でBAGの裁判官は、妥当な根拠がある場合は有期雇用契約を結ぶことができるとした「パートタイムと有期労働契約に関する法律(TzBfG)」14条1項の規定を指摘。そのうえで、原告との雇用契約を有期契約に制限するためには、原告が公的年金の受給を開始したという理由のほか、新たな人材を採用するためには原告との契約に期限を設けざるを得ないという事情が必要だとの判断を示した。ベルリン・ブランデンブルク州労裁に対しては、被告企業が原告の代わりとなる人材を採用する具体的な計画があったかどうかを踏まえて判決を下すよう命じた。