欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2015/5/13

経済産業情報

英国がユーロ離脱の国民投票、独経済界に危機感

この記事の要約

英国で7日に実施された総選挙の結果にドイツの経済界が危機感を募らせている。与党・保守党が過半数議席を獲得したことは政権安定につながるものの、同党の党首であるキャメロン首相は欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の実施を […]

英国で7日に実施された総選挙の結果にドイツの経済界が危機感を募らせている。与党・保守党が過半数議席を獲得したことは政権安定につながるものの、同党の党首であるキャメロン首相は欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の実施を公約に掲げているためだ。同国がユーロから離脱すると、英国経済が打撃を受けるだけでなく、EUと英国の経済関係に悪影響をもたらし、ドイツ企業は対英直接投資を見直さざるを得なくなる。

英国ではEUからの移民増を受けてEU離脱を求める国民が増えている。賃金が押し下げられたり、住宅不足が深刻化する懸念があるほか、移民のなかには水準の高い同国の社会保障を目当てに移り住む者もあるためだ。

こうした事情を背景に、反EU、移民排斥を掲げる英国独立党(UKIP)の人気が高まっており、今回の選挙では得票率を前回の3.1%から12.6%へと大幅に拡大。保守党、労働党に次ぐ3位に付けた。小選挙区制度のため獲得議席数は1にとどまったものの、将来的に議席数を増やしていく可能性を排除できない。

キャメロン首相はEU残留を目指しているものの、反EU世論を抑制するためには国民投票が必要と判断。EUとの今後の交渉を通じて移民制限、国家主権の拡大、英のEU予算分担の軽減などを認めさせ、国民の不満を和らげたうえで国民投票に踏み切り、EU離脱を否決させる考えだ。2017年末までに実施するとしている。

英国はドイツにとって3番目に大きい輸出先国で、昨年は輸出額が841億ユーロに上った。英国に事業拠点を持つ企業も多く、シーメンス(電機)の現地工場は13カ所、BMW(自動車)は3カ所に上る。同国がEUから離脱すると、EUとの取引で関税が復活する恐れがあるうえ、EUが他の国・地域と結ぶ自由貿易協定などが英国に適用されなくなるため、英国で事業を続けるメリットは大幅に低下する。

ドイツなど他のEU加盟国にとってもデメリットは大きく、独産業連盟(BDI)は8日、「英国がEUから離脱すると欧州域内市場の意義は低下する。グローバル経済の重心が欧州から他の地域に移っている時代には致命的だ」と懸念を表明した。

企業情報
経済産業情報
COMPANY |
CATEGORY |
KEYWORDS |