ストライキの対象となっていない企業がストで損害を受けてもストそのものに問題がない限り損害賠償を請求する権利はない――。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が8月25日に下した判決(訴訟番号:1 AZR 754/13)でそんな判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は航空管制官労組(GdF)を相手取ってルフトハンザなど航空会社4社が起こしたもの。
GdFは2009年春、シュツットガルト空港運営会社(Flughafen Stuttgart GmbH)を対象に同空港で勤務する駐機場職員などの無期限ストライキを開始した。その際、同空港に勤務するGdF加入の航空管制官に対し4月6日16~22時の予定で支援ストを実施するよう呼びかけた。
同支援ストはフランクフルト労働裁判所の差し止め命令を受けて途中中止となったものの、大量の欠航や遅延が発生。航空会社は違法なストで損害を受けたとして、GdFに損害賠償の支払いを求めて提訴した。損賠請求の根拠としたのは(1)故意ないし過失により法に反して他者の所有権を侵害した者は損害賠償の義務を負うとした民法典(BGB)823条1項(2)公序良俗に反して他者に損害を与えた者は損害賠償の義務を負うとしたBGB826条――の2規定。原告4社は、不当なストにより航空機の利用に大きな障害が出たことが所有権の侵害に当たると訴えた。
原告は下級審で敗訴し、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、GdFのストには違法性も公序良俗への抵触もなかったとの判断を示した。