2014/4/2

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

トルコ地方選、与党が圧勝

この記事の要約

トルコで3月30日に行われた統一地方選挙は、開票率98%の段階でエルドアン首相率いる与党・公正発展党(AKP)が45.6%を得票して大勝した。最大野党の共和人民党(CHP)は27.9%、右派の民族主義者行動党(MHP)は […]

トルコで3月30日に行われた統一地方選挙は、開票率98%の段階でエルドアン首相率いる与党・公正発展党(AKP)が45.6%を得票して大勝した。最大野党の共和人民党(CHP)は27.9%、右派の民族主義者行動党(MHP)は15.2%、クルド人を支持基盤とする平和民主党(BDP)は4%だった。欧州では、AKPが大方の予想を上回る圧勝ぶりをみせたことで、エルドアン首相の強権的な傾向がさらに強まるとの懸念が拡大している。

トルコの政情は、◇昨年のギジ公園抗議デモに始まる反政府運動◇12月以来の大規模な汚職疑惑◇首相のものとされる電話音声の流出――などで混乱している。その中で、エルドアン首相は地方選を自らの信任投票と位置づけ、得票率が2009年の前回選挙の38.8%を下回れば首相を辞任すると公約していた。

AKPは結果として得票を大きく伸ばし、イスタンブール、アンカラの2大都市の市長選でCHPに勝利したほか、有名観光地であるアンタルヤでもCHPから市長の座を奪い取った。ただ、得票率は直近の2011年議会選挙に比べると4ポイント減った。専門家は、大きな後退ではないが無視はできない数値とみている。

エルドアン首相は選挙勝利後の演説で、反政府派の責任を徹底追求する姿勢を強く打ち出し、反対派は捜査の手が回る前に「出国したほうがいい」とまで言い切った。首相の出馬が見込まれる今年8月の大統領選、来年の議会選を控えて、すでに選挙戦が始まっているようだ。

■AKPはなぜ強い?

スキャンダルに揺れながらもAKPが有権者の支持を集めている理由としては(1)「庶民・イスラム教徒の味方」というイメージ(2)経済成長の実現で、国民の生活がつつましくも「豊か」になった(3)公教育における宗教指導者養成の強化や、公務員のスカーフ着用解禁などに対する、イスラム教徒の支持(4)野党の力不足――などが挙げられる。(4)では、野党がエルドアン首相の政策を批判するばかりで、反政府派が求める「新しい政治」の方向性を示せなかったとの指摘がある。

一方でエルドアン首相の政敵に対する攻撃的な言動が、トルコ社会の亀裂を深めているのも確かだ。抗議デモの強制排除や、交流サイトのツイッターと動画投稿サイト・ユーチューブの閲覧禁止などにみられるように、首相の政治手法が強権的になっている結果、その求心力は失われつつある。専門家は、トルコ社会が大きく分けてAKP支持者と反対派、クルド系国民の3つに分かれ、互いに敵愾(がい)心を強める傾向にあると警鐘を鳴らしている。