2014/4/9

ハンガリー

ハンガリー議会選挙、与党が圧勝

この記事の要約

ハンガリーで6日行われた議会選挙(定数:199)は、開票率99%の時点でオルバン首相率いる中道右派のフィデス・ハンガリー市民連盟が44.4%の得票率を確保し、他党を大きく引き離して圧勝した。ただ、憲法改正に必要な3分の2 […]

ハンガリーで6日行われた議会選挙(定数:199)は、開票率99%の時点でオルバン首相率いる中道右派のフィデス・ハンガリー市民連盟が44.4%の得票率を確保し、他党を大きく引き離して圧勝した。ただ、憲法改正に必要な3分の2の議席を維持できるかどうかは現時点では微妙で、郵便投票の開票が完了する数日後に判明する見通しだ。一方で、単独政党としては極右政党のヨッビクが第2党となり、オルバン政権の右傾化が強まる可能性が出てきた。

フィデスは2010年の前回選挙に比べ支持率を8.3ポイント落としたが、現時点では定数の3分の2をぎりぎりで上回る133議席を獲得できる見通し。社会党など5党で作る中道左派連合は得票率26%で38議席、少数民族ロマ排斥や反ユダヤ主義をうたうヨッビクは、3.9ポイント増の20.5%で23議席を占める。環境・リベラル政党の「新しい政治の形(LMP)」は5.3%と阻止条項をわずかに上回り、5議席を確保する。投票率は61.2%と前回の64%を2.8ポイント下回った。

今回の選挙では、フィデスが3分の2の議席を確保できるかどうかが焦点となっている。同党は2010年以来、数の力で850を超える法案を可決し、司法機関およびメディアの統制を強めてきた。欧州連合(EU)や米国はこれを民主主義の柱の一つである「分権」を揺るがすものとしてたびたび批判してきた。

一方で過半数議席は獲得しており、一般政策では対外債務の圧縮など、これまでの路線を継続するとみられる。民間経済の分野では制度改革がめまぐるしく、事業の見通しが立てづらいことが問題となってきたが、この状態も続きそうだ。

■フィデス勝利の背景

フィデスが多くの国民の支持を受けている背景には、オルバン首相の大衆迎合的な政治(ポピュリズム)があるようだ。2008年の金融危機以来、景気悪化・低迷に苦しむ国民に、銀行、多国籍企業、「帝国的官僚主義(=EU)」と戦う姿勢を示したことが大いに受け入られた。公益料金を20%引き下げたことも好感を呼んでいる。

2011年に周辺国に住むハンガリー系住民の国籍取得を可能にし、これらの「新有権者」を支持層に取り込んだことも無視できない。その数は全有権者800万人のうち、20万人に上る。

制度面では憲法改正により、メディア統制を強化して反政府派の批判を抑え込んだことがプラスに働いた。また、2011年の選挙法改定で選挙制度が与党に有利となったという事情もある。現行法では45%得票し、かつ第2党との差が15ポイント以上あれば過半数を確保できる。