2014/11/5

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

トルコ経済、安定成長に課題

この記事の要約

トルコ経済が天井知らずの成長期を終え、新たな課題に取り組む時が到来している。国内の雇用を確保し、安定成長を図るためには、高付加価値生産への転換や教育水準の向上、司法制度の改革など、構造的な変化が必要だ。景気減速にイラクと […]

トルコ経済が天井知らずの成長期を終え、新たな課題に取り組む時が到来している。国内の雇用を確保し、安定成長を図るためには、高付加価値生産への転換や教育水準の向上、司法制度の改革など、構造的な変化が必要だ。景気減速にイラクとシリアの内戦の影響が加わり、与党・公正発展党(AKP)が国民の支持をどう維持していくのか、今後が正念場となりそうだ。

トルコ経済はエルドアン政権下の10年間に国内総生産(GDP)が60%弱増加した。しかし、失業率(季節調整済み)は今年1月から7月までに1.2ポイント増の10.4%まで悪化。GDP成長率は第2四半期に2.1%へ低下した。トルコは今後も人口増加が見込まれ、失業率縮小には2~3%の経済成長では足りない。

一方、インフレ率は依然として高い。2011年は中央銀行の目標値5.5%に対して結果は10%超、13年は5%に対して7.4%となっている。今年の目標率は6.6%と高めだが、国際通貨基金(IMF)は9%に上ると予測している。

これに加えて、トルコにはシリアとイラクから160万人を超える難民が避難してきている。これらの難民に労働許可を与えるのか、与えるとすればどのような条件で行うのかは、今後決まる。すでに難民の一部は闇労働に従事しているが、正式な労働許可が与えられることになれば、トルコの労働市場に影響が出るのは必至だ。

このような状況のなか、来年6月までに行われる議会選挙で、公正発展党(AKP)がエルドアン大統領の目指す憲法改正に必要な3分の2の議席を得られるかは不透明になっている。いずれにせよ、トルコは成長確保に向けて、遅くとも選挙後には構造改革の着手を迫られる。

政府内でもその必要性が認識されているようだ。ダウトオール首相など閣僚は、トルコが経済大国の仲間入りを果たすには、独自技術の開発で付加価値を拡大する努力が欠かせないとみる。これに向けて、大学など研究機関の水準をアップするとともに、研究開発支出を大幅に拡大することを求めている。

また、トルコ雇用団体は長期的な失業対策として教育に力を入れ、能力の高い労働人口を育成する必要性を訴えている。