2015/9/23

総合・マクロ

難民受け入れ分担案で合意できず、加盟国は国境管理を強化

この記事の要約

欧州連合(EU)は14日開いた臨時の内相・法相理事会で、紛争が続くシリアなどからの難民16万人をEU加盟国が分担して受け入れる案について協議したが、東欧諸国などの根強い反発で合意できなかった。22日に再度、内相・法相理の […]

欧州連合(EU)は14日開いた臨時の内相・法相理事会で、紛争が続くシリアなどからの難民16万人をEU加盟国が分担して受け入れる案について協議したが、東欧諸国などの根強い反発で合意できなかった。22日に再度、内相・法相理の臨時会合を開くとともに、23日には緊急の非公式首脳会議を招集し、分担案について協議する。

難民の受け入れ分担案は、欧州委員会が今月9日に発表した。各国の経済規模や人口に応じて割当人数を決め、受け入れを義務付けるという内容。16万人のうち、6月の首脳会議で合意済みの4万人の受け入れに関しては、自主的な枠組みで速やかに実行することで正式合意したが、追加分12万人の義務的な分担については合意できず、次回会合に結論を持ち越した。EU関係者によると、ドイツやフランスなど過半数が欧州委の提案を支持したものの、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ルーマニアが受け入れ分担を拒否。ポーランドなども受け入れの義務化に反対を表明したとされる。

欧州委のアブラモプロス委員(移民・内務・市民権担当)は会議後の会見で、「われわれが目指した合意は得られなかった。大半の加盟国は行動を起こす意思を示したが、すべての国ではなかった」と述べ、義務的な受け入れに強く反対する東欧諸国に対し、改めて責任の分担を求めた。また、加盟国による公平な受け入れ分担を求めるドイツのメルケル首相やオーストリアのファイマン首相は、政策決定を急ぐ必要があるとして、10月15、16両日に予定される首脳会議を前倒しするよう要求した。

一方、欧州議会は17日、難民12万人の受け入れ分担について採決を行い、賛成多数で欧州委の提案を支持した。これを受け、トゥスクEU大統領は23日に臨時首脳会議を開くと発表。欧州委も加盟国に対し、22日の臨時内相・法相理事会で分担案に合意するよう求めた。

こうしたなか、中東などから欧州を目指す難民は現在も増え続けており、EU内では国境管理を強化する動きが相次いでいる。すでにハンガリーはセルビアとの国境にフェンスを設置し、越境を試みる難民らに治安部隊が催涙ガスや放水銃を使用するなど強硬姿勢をとってきたが、15日には新たにルーマニアとの国境にもフェンスを設置する計画を発表。これを受け、バルカン半島を北上してドイツやオーストリアを目指す大量の難民や移民がハンガリーを迂回し、セルビア経由で隣国クロアチアに押し寄せた。

クロアチア政府は当初、難民の受け入れに寛容な姿勢をみせていたが、17日までの2日間で2万人近くが流入した事態を受け、同日中にセルビアとの国境の大半を封鎖。ロイター通信などによると、18日には約8,000人の難民や移民をハンガリーに移送したほか、スロベニアにも難民らを移送している。クロアチアのミラノビッチ首相は19日、「難民らをハンガリーに移送した。今後もこうした措置を続ける」と表明した。これに対し、ハンガリー政府は「クロアチアはすべての法的義務を放棄している」と強く非難。約1,000人の難民・移民を乗せてハンガリー南部に到着した列車の運転士を地元警察が逮捕するなど、両国の間で緊張が高まっている。

「ダブリン協定」と呼ばれるEUの規則では、最初に到着した国で難民申請を行うことになっているが、大量の難民が押し寄せるギリシャ、イタリア、ハンガリーでは対応が追いつかず、同システムは事実上、破綻状態にある。このためドイツ政府は申請手続きを済ませていない難民らも特別に入国を認め、同国で難民申請を受け付けてきた。しかし、メルケル首相は13日、1日に1万人以上が流入している南部のバイエルン州では対応能力が限界に近づいているとして、オーストリアとの国境で一時的に入国審査の再開に踏み切った。また、難民収容施設が満杯になっているオーストリアもドイツに追随し、16日から国境審査を一時的に復活させている。