ドイツでは健康上の理由で1日に6時間未満しか働けなくなった人に障害年金が支給される。同年金には労働可能な時間が1日3時間以上6時間未満の人を対象とした「部分的就労能力低下年金(Rente wegen teilweiser Erwerbsminderung )」と、同3時間未満の人を対象とした「全面的就労能力低下年金(Rente wegen voller Erwerbsminderung )」の2種類がある。受給期間は通常、期限が付けられるが、回復の見通しが立たない人には無期限で(回復するまで)支給される。
\ところで、企業などが経営上の理由で整理解雇を行う場合、同年金の受給者にも解雇一時金を支払わねばならないのだろうか。ここでは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が7日に下した判決(訴訟番号:1 AZR 34/10)に即してこの問題をお伝えする。
\裁判を起こしたのは全面的就労能力低下年金を受給していた社員。同社員は2001年12月、通勤途上の事故で就労不能となり病休。03年4月1日~09年6月30日は同年金を期限付きで受給し、09年7月1日以降は現在に至るまで無期限で受給している。事故で障害を負ってからは一度も勤務していない。
\被告企業は整理解雇に伴う社会的計画(Sozialplan)を従業員代表の事業所委員会と共同作成した際、(1)全面的就労能力低下年金を受給してまったく勤務していない(2)職場復帰のめども立たない――の2条件をともに満たす従業員には解雇一時金を支給しないことで合意した。
\原告は08年7月31日付で整理解雇されたが、社会的計画の規定に従い解雇一時金の支給がなかった。このため、これを障害者差別に当たるとして提訴し、一時金22万ユーロの支給を要求した。
\第1、2審は原告の訴えを棄却、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、解雇一時金は解雇に伴って職場と賃金・給与を失う被用者の経済的な不利益を相殺するために支給するものだと指摘。障害年金を長年、受給している原告には解雇に伴う経済的な不利益が生じず、一時金を支給しないのは妥当との判断を示した。
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