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2015/2/25

総合 - ドイツ経済ニュース

トラックカルテル制裁金は超巨額の見通し

この記事の要約

欧州の複数のトラックメーカーが中・大型車の販売で長年にわたって違法な販売カルテルを結んでいた問題で、欧州連合(EU)の欧州委員会はこれまででダントツ1位の制裁金額の支払いを命じるもようだ。消息筋の情報として経済紙『ハンデ […]

欧州の複数のトラックメーカーが中・大型車の販売で長年にわたって違法な販売カルテルを結んでいた問題で、欧州連合(EU)の欧州委員会はこれまででダントツ1位の制裁金額の支払いを命じるもようだ。消息筋の情報として経済紙『ハンデルスブラット(HB)』が24日報じたもので、総額は40億ユーロを超える。フォルクスワーゲン(VW)の独商用車子会社MANは最初に通報し調査にも積極的に協力したことから、制裁金を全額免除される可能性があるという。

欧州委は昨年11月、同カルテルに関与した各社に異議告知書を送付したことを明らかにした。対象はMANとVWのスウェーデン子会社スカニア、および独ダイムラー、スウェーデンのボルボ、伊イベコ、蘭DAFの6社。6社は1999年から2011年にかけて販売価格、納期などで違法な取り決めを行っていたとされる。

欧州委は11年1月、同カルテル疑惑で各社に立ち入り調査を実施し、摘発に乗り出した。その後の調査の結果、関係各社が欧州経済地域(EEA)内で価格カルテルを結んでいる疑いが濃厚となったため、異議告知書の送付に踏み切った。カルテルの事実が最終的に確認されれば、対象企業は世界の年間売上高の最大10%に相当する制裁金の支払いを命じられる可能性がある。

欧州委が科した独禁法違反の制裁金で過去最大のものは、テレビやコンピューターのモニターに使われるブラウン管の販売に関するカルテルを対象としたもので、総額は14億7,000万ユーロだった。トラックカルテルの制裁総額が仮に40億ユーロ超となると、ダントツ1位の規模となる(表参照)。

HB紙が業界情報として報じたところによると、ダイムラーとボルボはすでにカルテルへの関与を認め、捜査に積極的に協力している。協力の度合いによっては制裁金が30~50%減額されるためだ。ボルボは同カルテルの引当金として14年10-12月期に4億ユーロ、ダイムラーもこれまでに約10億ユーロを計上した。

MANは通報の事実をVWに伝えず

MANは贈賄事件に絡む社内捜査を進めるなかでトラックカルテルの事実をつかんだ。MANのフェルディナンド・ピエヒ監査役会長(VW監査役会長)はこれを受けて、制裁金の全額免除措置を受けるために欧州委に通報することを決定したという。

ピエヒ氏はVW監査役会長を兼任するにもかかわらず、この事実をVWのマルティン・ヴィンターコルン社長に伏せていたもようだ。同社長に仮に伝えると同カルテルに関与する別のVW子会社スカニアに欧州委への通報で先を越される恐れがあったことが背景にあるもよう。ただ、この結果、VWグループの商用車事業統合をめぐって悪化していたMANとスカニアの関係は一段と冷え込んだ。MANに対するスカニアの不信感が強まったためだ。

VWグループの商用車事業担当取締役に2月1日付で就任したアンドレアス・レンシュラー氏は今回のカルテル事件を利用してスカニアの抵抗を砕き、VWブランド商用車とMAN、スカニアの3者からなるアライアンスを実現する考えという。同氏は04年から13年にかけてダイムラーでトラック部門を統括してきた経緯があるものの、欧州委は今回のカルテルに同氏が関与していかなったとみているといい、VWでの任務を行ううえで問題はないもようだ。