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2015/2/25

ゲシェフトフューラーの豆知識

従業員に仮病の疑い、監視は可能か?

この記事の要約

従業員が仮病で仕事を休んでいる疑いがある場合、雇用主は探偵などを使って監視することができるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が19日に判決(訴訟番号:8 AZR 1007/13)を下したの […]

従業員が仮病で仕事を休んでいる疑いがある場合、雇用主は探偵などを使って監視することができるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が19日に判決(訴訟番号:8 AZR 1007/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は被告企業の元秘書が同社を相手取って起こしたもの。同秘書は2011年12月27日から12年2月28日にかけて病欠した。雇用主に提出した労働不能証明書(通称ゲルべシャイン)は計6通で、そのうち最初の4通を一般医、残り2通を整形外科医が作成した。疾患名は当初、気管支疾患となっていたが、その後、椎間板ヘルニアとなったため、雇用主は仮病の疑いがあると考え、探偵に依頼して病休中の同秘書を監視した。

探偵が撮影した写真・ビデオには、コインランドリーに車で出かけた同秘書が洗濯物を運んだり、ひざを使ってトランクを開けたりする場面や、飼い犬を連れて夫と散歩する場面が収められていた。

これを受けて、雇用主は2月28日付の文書で同秘書に即時解雇を通告。同秘書はこれを不当として解雇無効の確認を求める訴訟を起こし、慰謝料の支払いも請求した。

2審のハム州労働裁判所は解雇無効を言い渡した1審判決を支持するとともに、慰謝料1,000ユーロの支払いを被告に命令。最高裁のBAGも2審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、仮病の疑いのある社員を監視したりその撮影をひそかに行うためには疑いを裏付ける具体的な根拠が必要だと指摘。原告が異なる医師から労働不能証明書の発行を受けたことや、労働不能の理由が気管支疾患から椎間板ヘルニアに変わったことは具体的な根拠に当たらないとの判断を示した。