欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/3

総合 – 欧州経済ニュース

英のEU離脱めぐる国民投票法案、連立与党内の溝埋まらず廃案に

この記事の要約

EU離脱の是非を問う国民投票を予定している英国で、連立政権を組む保守党と自由民主党が10月28日までに投票実施の関連法案をめぐる調整が行われたが不調に終わった。これによって今会期中に国民投票の実施を明文化した法案を採決す […]

EU離脱の是非を問う国民投票を予定している英国で、連立政権を組む保守党と自由民主党が10月28日までに投票実施の関連法案をめぐる調整が行われたが不調に終わった。これによって今会期中に国民投票の実施を明文化した法案を採決することは不可能になり、事実上の廃案となった。

英国では伝統的にEU懐疑論が根強く、ユーロ危機を背景にEU離脱論が高まりをみせている。こうした中、キャメロン首相は昨年1月、2015年5月の次期総選挙で保守党が勝利した場合、EUとの間で英国の加盟条件について再交渉した上で、17年末までにEU残留の是非を問う国民投票を実施する意向を表明した。しかし、EU離脱を唱える保守党議員は国民投票の実施を法律として明文化するよう要求。一方、自由民主党は野党・労働党とともにEU離脱に反対の立場をとっており、反EU・反移民を掲げる英国独立党(UKIP)が急速に勢力を拡大するなか、法案をめぐり連立内で意見調整が続いていた。

法案を提出した保守党のボブ・ニール議員は「自民党は下院の採決で国民投票の実施に反対する勇気がないため、『議会のトリック』を使って英国民に意思表明の機会を与えないように画策した」と連立パートナーの対応を批判。これに対し自民党は、総選挙で保守党に投票することが国民投票の実施を確実にする唯一の方法だと国民にアピールする狙いから、保守党には初めから法案を成立させる気がなかったと反論している。マルコム・ブルース副党首は「保守党は法案にばかげた条件を追加して妥協点を探る自民党側の試みを故意に妨げたうえで、こちらにすべての責任をなすりつけようとした」と述べ、保守党の姿勢を激しく非難した。

一方、スコットランド国民党(SNP)の次期党首となるスタージョン副党首は28日、国民投票を実施した場合、「連合王国」を構成するイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドでそれぞれEU離脱の賛成票が過半数に達した場合のみ、英国としてEUからの離脱を認めるべきだとの考えを表明した。スコットランドでは9月に実施された住民投票で英国からの独立反対派が過半数を占めたが、伝統的に親EU派が多く、SNPは独立が実現した場合、単独でEUへの加盟を目指す方針を掲げていた。

キャメロン首相は議会でスタージョン副党首の発言に触れ、連合王国を構成する各地域にはそれぞれ自治権が認められているものの、外交政策に関しては中央政府に管轄権があり、EU加盟問題などについて地方の意見を聞く法的義務はないと指摘。「英国は1つの国だ。EU残留か脱退かを決める国民投票も1つであり、投票した国民の多数意見によって決まる」と述べ、SNPの提案を拒否する考えを示した。