欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/3

EU産業・貿易

EUがWTOにパネル設置要請、ブラジルの関税めぐる紛争で

この記事の要約

欧州委員会は10月31日、国内産業の保護を目的とするブラジルの税制が国際ルールに違反しているとして、世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請したと発表した。EUは自動車やコンピューターなどの輸入品に […]

欧州委員会は10月31日、国内産業の保護を目的とするブラジルの税制が国際ルールに違反しているとして、世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請したと発表した。EUは自動車やコンピューターなどの輸入品に対して高い関税をかけていることを問題視し、昨年12月にWTOに提訴。是正を求めて欧州委がブラジル政府との協議に臨んだが、不調に終わったため次のステップに踏み切った。

ブラジル政府は2011年9月、国産部品または南米南部共同市場(メルコスール)域内の現地調達比率が一定の水準に満たない自動車に対し、最大30%の工業品税(IPI)を追加的に課す制度を導入した。当初は12年末までの時限措置だったが、12年10月には同措置を5年間延長するとともに、通信ネットワーク機器などに対象を拡大することを決定。現在は自動車に加え、パソコン、スマートフォン、半導体など幅広い輸入品に高い税率が適用されている。

EUは輸入品に高い関税を課す一方、自国企業を保護する政策はWTOが禁止する不当な差別にあたると主張し、ブラジル側に是正を求めている。欧州委は声明で「ブラジル政府は税制上の優遇措置を適用する条件として国内企業に国産品の使用を奨励することで、不当に貿易を制限している。一連の措置により、ブラジル国内に生産拠点を持たないEUのメーカーは深刻な打撃を受けている」と批判。さらに、ブラジルでは国際競争力のない国内企業が過剰に保護され、結果的に同国の消費者は合理的な価格で質の高い製品を入手する選択肢を奪われているとし、たとえば国産のスマートフォンはIPIが免除されているにもかかわらず、EU諸国と比べて50%以上高い価格で取引されていると指摘している。

ブラジル政府は正当な措置との主張を崩していないが、同国の保護主義政策をめぐっては日本や米国も批判を強めている。パネル設置の要請は11月18日に開かれるWTO紛争解決機関の会合で協議される。1回目の協議ではブラジル側が拒否権を行使する見通しだが、2回目は拒否できないため、年内にもパネル設置が決定される可能性がある。