欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/13

EU産業・貿易

オイルサンド由来の燃料の規制を撤回、カナダ産原油の輸入に道

この記事の要約

欧州委員会は7日、輸送部門における温室効果ガス削減目標を定めたEUの「燃料品質指令」に関連して、オイルサンド由来の燃料に対する規制を事実上撤回した。EUはウクライナ情勢を背景にエネルギーの安定確保に向けて調達先の多様化を […]

欧州委員会は7日、輸送部門における温室効果ガス削減目標を定めたEUの「燃料品質指令」に関連して、オイルサンド由来の燃料に対する規制を事実上撤回した。EUはウクライナ情勢を背景にエネルギーの安定確保に向けて調達先の多様化を急ぐ必要に迫られており、カナダから通常の原油より二酸化炭素(CO2)排出量が多いオイルサンド由来の原油を輸入できるようにするのが狙い。

オイルサンドは流動性のない高粘度の重質油を含む砂および砂質岩で、オイルサンド由来の原油は通常の原油と比べてCO2排出量が20%以上も多いとされる。EUは2009年、域内の燃料供給事業者に対し、20年までに燃料製品の温室効果ガス排出量をライフサイクル全体で6%削減することを義務づけた燃料品質指令を採択した。欧州委員会は同指令の実施に向けた具体策の中で、燃料供給事業者がCO2排出量の多い燃料を識別するためのリストにオイルサンドを加えることを提案したが、これに対し豊富なオイルサンド埋蔵量を持つカナダが強く反発。さらに、ウクライナ情勢をめぐるロシアとの関係悪化を受けてエネルギー資源の調達先を多様化するため、カナダ産の原油を含む北米からの輸入を拡大する必要があるとの意見が欧州委内部で大勢を占めるようになり、最終的にオイルサンドに対する規制は見送られた。

今回発表された新ルールによると、燃料供給事業者は原料の温室効果ガス排出量を加盟国に報告する義務を負うものの、削減幅は原料に関係なく最終的な燃料製品の排出量を基準に算出される。このため、生産過程で大量のCO2を排出するサンドオイル由来のガソリンやディーゼルなども、通常の原油から生産される燃料と同等の扱いとなる。一方で、ガソリン、ディーゼル、液化天然ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)についてそれぞれライフサイクル全体のCO2排出量に基づく規定値を設定し、燃料供給業者が排出量を報告する際にこの値を利用することを義務付けることや、報告に関するルールの厳格化などが盛り込まれ、排出削減目標が確実に達成されるように配慮されている。しかし、環境団体からは「環境より通商を優先させた」(グリーンピース)と批判の声があがっている。