欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/13

EU産業・貿易

アマゾン向け税優遇策も調査対象に、ルクセンブルクに違法な国家補助の疑い

この記事の要約

欧州委員会は7日、ルクセンブルクが米アマゾン・ドット・コムに適用している税制上の優遇措置が特定企業に対する国家補助を制限するEU法に違反する疑いがあるとして、本格調査を開始したと発表した。欧州委は9月末、米アップルに対す […]

欧州委員会は7日、ルクセンブルクが米アマゾン・ドット・コムに適用している税制上の優遇措置が特定企業に対する国家補助を制限するEU法に違反する疑いがあるとして、本格調査を開始したと発表した。欧州委は9月末、米アップルに対するアイルランドと伊フィアットに対するルクセンブルクの課税措置が違法な補助にあたるとの暫定的な見解を示したばかり。EUは国際的に批判が高まっている多国籍企業の課税逃れに厳しく対処する姿勢を鮮明にしており、低税率を武器に企業誘致を推進してきた一部加盟国の政策に影響しそうだ。

今回の調査で焦点となるのは、ルクセンブルク政府とアマゾンが2003年に合意した課税措置に関する取り決め。欧州委によると、アマゾンは欧州事業の利益をルクセンブルクに集中させたうえで、同国に拠点を置く欧州の販売子会社アマゾンEUは、欧州における知的財産管理を専門とする同国内の別会社にロイヤルティを支払うことで税控除を受けてきた。さらにこの別会社アマゾン・ヨーロッパ・ホールディング・テクノロジーズ(アマゾンSCS)は「フロースルー」と呼ばれるシステムにより、ルクセンブルクで法人税の課税対象となっていない。欧州委はルクセンブルク政府がこうした一連の手法による課税利益の過小評価を容認したことで、アマゾンは経済的優位性を与えられてきた可能性があるとみている。

欧州委は具体的な数字には言及していないが、英紙フィナンシャル・タイムズは消息筋の話として、ルクセンブルク政府はアマゾンを誘致する目的で、欧州事業の利益に対する同国での課税率を1%以内に抑える取り決めを交わしたと報じている。同紙によると、アマゾンEUは13年に136億ユーロの売上高を計上したが、アマゾンSCSに対する21億ユーロのロイヤルティ支払いなどを差し引いた課税利益は2,880万ユーロにとどまり、法人税をほとんど納めていないという。

欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は「各国当局は特定の企業が自社に有利になるような計算手法を用いて課税利益を実際より低く見積もることを許してはならない」と警告した。

これに対してルクセンブルク財務省は「欧州委の主張には根拠がなく、アマゾンに対する優遇措置はなかったことが調査で明らかになると確信している」との声明を発表。アマゾンも「他の企業と同じ課税ルールが適用されており、特別な優遇措置は受けていない」と反論している。