2012/3/7

総合・マクロ

ロシア大統領選挙、公正選挙にはほど遠く=国際選挙監視団

この記事の要約

ロシアで4日行われた大統領選挙の選挙運動や投票手続きを調査した国際選挙監視団は5日、数多くの問題が認められ、自由・公正な選挙は行われなかったとする評価を公表した。それでも、国内の独立系監視団体「ゴロス」がプーチン氏の得票 […]

ロシアで4日行われた大統領選挙の選挙運動や投票手続きを調査した国際選挙監視団は5日、数多くの問題が認められ、自由・公正な選挙は行われなかったとする評価を公表した。それでも、国内の独立系監視団体「ゴロス」がプーチン氏の得票率を50.2%と推定するなど、同氏が過半数の支持を集めたことは確実なようだ。一方で反プーチン派は政府批判を弱めていない。このなかで、プーチン氏が支持基盤である官僚・公務員、年金受給者などの反対を押して経済改革をどう進めていくのか。新政権をとりまく環境は以前に比べ、ずっと厳しくなっている。

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12月の下院選挙の不正疑惑に国民の抗議運動が盛り上がり、プーチン首相の提案で投票所にウェブカムが設置されるなど、今回の大統領選挙では手続きの公正さに大きな注目が集まった。それにもかかわらず、従来と同じような不正が行われたようだ。欧州安全保障協力機構/民主制度・人権事務所(OSCE/ODIHR)のタリアヴィーニ選挙監視団長は、「大量の票がまとめて投げ込まれたケースが数多くみられた」とコメント。欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視団も、視察した投票所の3分の1で不正があったと発表した。欧州評議会議員議員会議(PACE)のコクス選挙監視団長は、「ウェブカムや透明な投票箱が設置されたが、欧州評議会の加盟国としてロシアに導入が義務付けられている民主的選挙の標準が満たされていない事実に変わりはない」と話している。

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これに対して中央選管のチュロフ委員長は、世界で最も自由・公正な選挙だったと反論した。

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開票結果を受けて、国内各地で抗議集会が行われたが、中でもモスクワ・プーシキン広場には大統領選に出馬した実業家のプロホロフ氏など約2万人が集まった。演説者の多くが下院・大統領選挙が前倒しで実施されるまで運動を続ける決意を表明した。

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当局は集会後、解散指示に従わなかったとして、反体制ブロガーのナヴァルニ氏や反体制運動「左翼戦線」のウダルツォフ代表など参加者およそ250人を逮捕した。サンクト・ペテルブルグでも集会参加者300人が逮捕されたという。少なくとも著名人については6日までに釈放されたようだが、当局の許可を受けた集会で逮捕者が出たことに運動への弾圧が強まるとの懸念も浮上している。

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■経済改革は難しい綱渡り

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プーチン氏の過半数票獲得で、ロシアが政治的に安定している事実は示されたものの、社会・経済が変化しつつあることは否定できない。これに対応した改革をどう進めていくのか、次期政権は難しいかじ取りを迫られそうだ。

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ルネッサンス・キャピタルのチャカロフ主任エコノミストは、長く続いた財政・貿易黒字の時期は終わり、ロシアは2014年から双子の赤字と格闘する見通しと話す。それだけに経済モデルの改革は緊急の課題だ。

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資源依存からの脱却には経済の近代化・多様化・自由化が必要となる。ただ、その動きを支持する都市中産層は反体制運動の中核を担い、汚職撲滅、政治的競争の拡大、司法国家の定着も求めている。一方でプーチン支持派は現体制の受益者であり、現状維持を望んでいる。

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プーチン氏がこの難しい状況の中でどのような政策をとっていくのかが、ロシアの将来を大きく左右しそうだ。

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