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2011/7/20

ゲシェフトフューラーの豆知識

300ユーロは少額横領にあらず

この記事の要約

少額の横領を行った被用者を解雇することは難しい。これについては最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年の判決で基準を示したように、処分歴のない者に対して下せる処分は警告にとどまる(本誌2010年6月16日号を参照)。\ と […]

少額の横領を行った被用者を解雇することは難しい。これについては最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年の判決で基準を示したように、処分歴のない者に対して下せる処分は警告にとどまる(本誌2010年6月16日号を参照)。

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ところで「少額横領」とは具体的にどの程度の額を指すのであろうか。これについては実は明確な基準が提示されていないのだが、ハム州労働裁判所が今年3月に参考になる判決(訴訟番号:10 Sa 1788/10)を下したので、ここで紹介する。

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裁判を起こしたのは勤続38年の林業従事者。2009年夏の早朝、自家用車で森に行き、乾燥した木材を被けん引車に積み込んで自宅に持ち去ろうとした。その際、雇用主に呼び止められ、横領が発覚。即時解雇を通告された。原告は横領の額が小さく警告処分が妥当だとして提訴した。

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ハム州労裁が下した判決は原告敗訴だった。判決理由で裁判官は、原告が盗んだ木材は価値にして250~300ユーロに上り額が大きいと指摘。横領の額が大きい場合は少額横領と異なり労使間の信頼関係が修復できないとして、即時解雇は妥当だとの判断を示した。原告の勤続年数が長いことを考慮しても解雇を無効とすることはできないとしている。

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