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2012/5/16

ゲシェフトフューラーの豆知識

解雇の報復で告発は不当

この記事の要約

解雇の腹いせに企業の不正行為を当局に告発しようと被用者が考えるのはある意味、自然なことかもしれない。だが、実際にそうした行為を行うことは法的に妥当でない――。そんな判断をシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が4月に […]

解雇の腹いせに企業の不正行為を当局に告発しようと被用者が考えるのはある意味、自然なことかもしれない。だが、実際にそうした行為を行うことは法的に妥当でない――。そんな判断をシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が4月に下した判決(訴訟番号:2 Sa 331/11)で示したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは被告企業に勤務していたセールス担当エンジニア。同エンジニアは2009年2月中旬、休暇中にけがをして長期間、欠勤した。けがが全治した同年11月以降はリーマンショックの影響で会社が操業短縮を実施しており、同エンジニアを含む複数の職員は勤務時間がゼロとなっていた。

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雇用主はこれを受け、労働契約の解除を原告に要請し、退職手当の支給も提示したが、拒否された。その後、原告と仕事でチームを組む社員2人から、原告を解雇しないなら退職すると迫られたため、雇用主は2011年2月、原告に解雇を通告。原告はこれを不当として提訴した。

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原告はまた、操短で勤務時間がゼロとなっていた当時、被告企業は操短制度を不正に利用しているとの告発を労働局に行っていた。解雇訴訟の係争中にも同じ内容の告発を実行。労働局はこれを受けて検察当局に刑事告発し、検察は雇用主に対する捜査を開始した(捜査の結果は判決文のなかで明らかにされていない)。

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雇用主はこれを受けて、原告との労働契約の解除を承認するよう審理のなかで要請した。

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第2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁は解雇訴訟については原告の訴えを認める判断を示した。判決理由で裁判官は、雇用主は原告の同僚2人の圧力を受けて原告に解雇を言い渡す前に、何らかの具体的な解決策を取る義務があったが、これを怠ったと指摘した。

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一方、雇用主の労働契約解除申請については承認した。判決理由で裁判官は、原告は告発を行う前に操短の問題について雇用主と話し合う義務があったと指摘。そうした行動を取らずに告発を行ったことで、良好な労使関係を維持していくことは不可能になったとの判断を示した。

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最高裁への上告は認めなかった。

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