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2015/7/22

ゲシェフトフューラーの豆知識

メールでの労働時間短縮申請は有効か

この記事の要約

勤続期間が6カ月を超える被用者は勤務時間の短縮とその割り振りを雇用主に申請できる。これはパートタイム・有期雇用契約法(TzBfG)8条に記されたルールであり、被用者は希望する時間での勤務が始まる3カ月前までに申請を出さな […]

勤続期間が6カ月を超える被用者は勤務時間の短縮とその割り振りを雇用主に申請できる。これはパートタイム・有期雇用契約法(TzBfG)8条に記されたルールであり、被用者は希望する時間での勤務が始まる3カ月前までに申請を出さなければならない。申請を受けた雇用主は当該被用者の希望に沿うよう可能な限り努力する義務があるものの、経営的に不可能であれば拒否できる。その場合は拒否の意向を、被用者が希望する時間での勤務が始まる1カ月前までに伝えなければならない。この期限を守らないケースでは被用者の希望がそのまま通ることになるので、雇用主にとっては要注意である。

ところで、勤務時間短縮の希望を被用者が書式の形で申請せずに、電子メール本文の文面で伝えた場合、同メールは有効な申請とみなされるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が1月に判決(訴訟番号:9 AZR 860/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は不動産会社の女性社員が同社を相手取って起こしたもの。同社員は2011年9月21日、育児休暇終了後の勤務時間の希望を記した電子メールを被告企業の秘書に送信した。文面は「私ども夫婦は熟考の末、私が1日当たり6時間の勤務、すなわち8時から14時までの勤務を週5日間、行うという結論に至りました。休憩時間は取りません(6時間しか働かないのであれば必要ないので)。2012年6月11日に職場復帰するつもりです。私の考えが会社の意向にかなっていることを望みます。返信をお待ちしています」となっていた。

同社員が12年6月11日に職場に復帰したところ、会社側は同18日から週40時間のフルタイムで働くことを要求。これについては3月に行った同社員との面談で伝えたと主張した。同社員はこの要求の受け入れを拒否し、裁判を起こした。

会社側は裁判で、原告の電子メールは勤務時間の短縮に向けた話し合いを求めるものに過ぎず、勤務時間短縮の申請ではなかったと主張。申請が出されていない以上、以前通りのフルタイム勤務を命じることは妥当だとの立場を示した。

これに対しBAGの裁判官は、原告のメールは申請としては非典型的な形式だが、希望内容が具体的に書かれており申請として有効だと指摘。同メールでの申請に対して文書で回答しなかった被告はTzBfG8条の規定に基づき原告のパート勤務要求を全面的に受け入れなければならないとの判断を示した。