欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/14

総合 – 欧州経済ニュース

デジタル基盤整備の支出を財政赤字の対象外に、伊首相が提唱

この記事の要約

7月にEU議長国となったイタリアが、財政規律をめぐって他の加盟国や欧州委員会と対立している。レンツィ首相は8日、規律を緩和し、デジタル技術のインフラ整備のための歳出を財政赤字に勘定しないことを提唱したが、同日開かれたEU […]

7月にEU議長国となったイタリアが、財政規律をめぐって他の加盟国や欧州委員会と対立している。レンツィ首相は8日、規律を緩和し、デジタル技術のインフラ整備のための歳出を財政赤字に勘定しないことを提唱したが、同日開かれたEU財務相理事会で一蹴された。イタリアは半年間にわたる議長国任期中に、同国の主導で財政緊縮推進から成長重視への大転換を図りたい考えだが、先行きは厳しそうだ。

レンツィ首相はヴェネツィアで開催されたデジタル問題に関する会議で、同方針を明らかにした。イタリアなど重債務国がEUの財政規律に縛られ、景気底上げに向けた財政出動の余地が限られていることを問題視したもので、ブロードバンド回線の整備などデジタル技術関連の基盤整備に対する支出を財政赤字から除外するべきだと指摘。EU議長国として、これを盛り込んだ規律緩和を正式提案する意向を表明した。

EUは6月末の首脳会議で、ギリシャに端を発したユーロ危機を契機に多くの国で導入された厳しい財政緊縮策が国民の反発を招き、先の欧州議会選で反EU勢力の躍進を許した反省を踏まえ、財政規律を定めた安定成長協定のルールは変えないものの、規律を柔軟に運用することで合意。過剰な財政赤字を抱える国が構造改革に取り組む場合は、赤字是正期限の延長を認めるといった特例措置を認める方針を打ち出した。

レンツィ首相の提案は、同合意を意識したもの。現行ルールの枠内の特例措置に該当するという考えだ。しかし、EU財務相理事会ではルールを逸脱しているとして批判が集中した。欧州委のカラス副委員長は理事会後の記者会見で「支出を財政赤字に勘定しないというのは、(規律緩和とは)関係のない本質的な問題。支出に良いも悪いもない。支出は支出だ」と述べ、容認しない意向を表明。財政規律重視派であるドイツのショイブレ財務相は「構造改革は、財政安定化を怠るための言い訳とはならない」と非難した。さらに、イタリアのパドアン経済・財務相にとっても首相の提案は寝耳に水で、「いま聞いた」と戸惑いを隠せなかった。