2011/10/5

チェコ・スロバキア

豪・チェコの科学者が提携、トリウム溶融塩炉の開発で

この記事の要約

福島第一原発事故を機にエネルギーの安全性への関心が高まる中、チェコとオーストラリアの間でトリウム溶融塩炉(MSR)の開発に向けた動きが活発化している。トリウムMSRはウラン燃料を用いる原子炉に比べて安全性が高く、燃料効率 […]

福島第一原発事故を機にエネルギーの安全性への関心が高まる中、チェコとオーストラリアの間でトリウム溶融塩炉(MSR)の開発に向けた動きが活発化している。トリウムMSRはウラン燃料を用いる原子炉に比べて安全性が高く、燃料効率が良く、かつ、既存の核廃棄物の処理にも利用できるとされる。電力需要を満たし、環境への負荷を減らせる技術として期待が高まっている。

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チェコとオーストラリアの科学者など50人が参加して5年前から進めてきた開発プロジェクト「トリウム・エナジー・ジェネレーション(TEG)」は、原子炉の代替技術への関心が強まったことで研究資金調達の幅が広がった。年内に正式にコンソーシアムを立ち上げ、5年を期限に研究開発に取り掛かる。研究が進展した段階で、両国の産業グループと商業化に向けて提携する計画だ。

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TEGのステパネク事務局長は、トリウム資源が豊富なオーストラリアと、同分野の研究・技術力で世界をリードするチェコが手を組めば、両国関係にも大変有益と話す。

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研究者らによると、トリウムMSRは原理上、燃料溶融などの事故が起こらない。核廃棄物の量もウラン原子炉より格段に少ないため、軍事目的に転用することが難しい。さらに、既存の核廃棄物を燃料として利用できるため、原子力発電の問題の多くを一挙に解決できるという。

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ただ、実用化に向けた問題解決にかかる時間については、5年から50年と見方に大きな違いがある。◇研究資金の確保◇特許取得手続き◇費用対効果――といった点をクリアする必要があり、トリウムMSRが近い将来、エネルギー源として重要な役割を果たすかどうかは未知数だ。

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世界原子力協会(WNA)の燃料技術専門家であるケリー氏は、トリウムMSRは「信頼に値し、実証された技術」と評価しながらも、「トリウム発電に向けては、他にもいくつか優れた提案がなされている」と話す。MSRの特許取得は20年後で、他の技術に先を越される可能性が高いとみている。

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さらに、トリウムを利用する目的をはっきりさせる必要を指摘する。1つのタイプの炉でトリウムの長所をすべて活かせるわけではないからだ。低温で稼働する方が発電量が大きい炉もあれば、ウラン廃棄物を燃料にできる炉もある。開発の前に、この点を見定めるべきと勧めている。

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