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2011/8/10

総合 - ドイツ経済ニュース

ドイツ経済にも黄信号か、DAXが10営業日で20%下落

この記事の要約

ドイツ経済の先行きが読みにくくなってきた。最近相次いで発表されている4-6月期決算をみると、大手企業の多くが大幅な増収増益を記録。同期の国内総生産(GDP)もプラス成長を確保したとみられる。一方、金融市場は米国とユーロ諸 […]

ドイツ経済の先行きが読みにくくなってきた。最近相次いで発表されている4-6月期決算をみると、大手企業の多くが大幅な増収増益を記録。同期の国内総生産(GDP)もプラス成長を確保したとみられる。一方、金融市場は米国とユーロ諸国の財政危機を受けて混乱、株価の世界的な急落に歯止めがかからない。米国経済の二番底懸念や新興諸国の景気減速、金融機関の国債損失処理が今後、実体経済にもたらす影響が気がかりだ。

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ドイツの最大手企業30社を対象としたドイツ株価指数(DAX)は7月26日の7,349をピークに急下降が始まった。8月9日までの10営業日の下落幅は1,432ポイントで19.5%に上る。9日は前日比0.1%減5,917となり、落ち込みにようやく歯止めがかかったものの、予断は許さない。

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株式市場底割れのきっかけとなったのは米国債がデフォルトの危機に陥ったことだ。最終的には債務上限の引き上げで米与野党の妥協が成立したためデフォルトは回避されたものの、その直後に格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債の格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたこともあり、市場では米国経済の二番底懸念が増大。これにイタリア、スペインへのユーロ財政危機の波及が重なり、株式市場は全世界的に大幅続落が続いた。

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そうしたなか、最近次々と発表されるドイツ企業の4-6月期(ないし上半期)決算は、原発廃止政策を受けて巨額の特損を計上したエネルギー業界やギリシャ国債の減損処理を余儀なくされた金融業界などを除くとおおむね好調だ。自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の6月中間期の最終利益は64億9,600万ユーロで、前年同期の3.5倍に急増。高級車3社の売上高営業利益率(EBITベース)はBMW(自動車事業)の13.3%を筆頭にすべて2ケタ台を確保した(アウディ11.8%、メルセデス・カー・グループ10.0%)。バイエルは農薬・樹脂部門が好調で4-6月期の最終利益が前年同期比で41%増加。先の金融危機で倒産の危機に直面した半導体大手インフィニオンも同51%の最終増益を記録した。

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ドイツ企業が好調なのは2000年代の前半に事業の選別やコスト削減、グローバル化対応を徹底的に進めたためだ。これにより一時は「欧州の年老いた病人」と揶揄されたドイツ経済の国際競争力は大幅に向上。金融大手ウニクレディトの株式ストラテジストは『ヴェルト』紙に対し、「ドイツはわれわれが2011年、12年の利益予測を上方修正するユーロ圏内の唯一の国だ」と明言した。世界経済のけん引車となった新興市場に自動車、電機、機械、化学などの主要産業が深く食い込んだことが大きい。

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輸出成長率が下期は半減も

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ただ、米国経済が再びリセッションに陥るとドイツ経済も少なからずしわよせを受ける見通しだ。ドイツのほか中国などの新興国の対米輸出も鈍るためで、新興国の景気はこれにより減速。これらの国へのドイツの輸出も勢いを失う。

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インフレ抑制に向けて新興諸国が金融引き締めに動いていることは追い打ちをかける。リーマンショックの際と異なり、これらの国が世界経済の悪化を緩和することはもはや期待できないためで、ドイツは主要な輸出市場で大きな痛手を被る恐れがある。

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こうした懸念を背景に経済界には先行きへの慎重な見方が広がっており、独卸売・貿易業者連盟(BGA)はこのほど、ドイツの輸出成長率が下半期に半減するとの予測を発表した。7月の輸出成長率が大幅に鈍化したことは気になるところだ。独工作機械メーカーは上半期の受注高が前年同期の平均2倍に拡大したにもかかわらず、需要急減の可能性を踏まえ生産能力の拡大を見合わせている。

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景気の見通しが悪化すると、企業投資のほか、現在好調な個人消費も鈍る――。そうしたシナリオが現実味を帯びる気配がにわかに漂い始めている。

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