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2013/8/28

ゲシェフトフューラーの豆知識

障害者の採用選考で最高裁判決

この記事の要約

重度障害者を恒常的に5人以上雇用する企業は社内に重度障害者の代表機関(Schwerbehindertenvertretung。略:SchwbV)を設置しなければならない。これは第9社会法典(SGBⅨ)に定められたルールで […]

重度障害者を恒常的に5人以上雇用する企業は社内に重度障害者の代表機関(Schwerbehindertenvertretung。略:SchwbV)を設置しなければならない。これは第9社会法典(SGBⅨ)に定められたルールである。SGBⅨ81条1項第6文にはまた、重度障害者の採用選考にはSchwbVが参加しなければならない旨が記されている。では、SchwbVの役員自身が採用募集に応募した場合もこれら役員を選考に参加させなければならないのだろうか。それとも利害抵触に当るとして参加させてはならないのだろうか。この問題をめぐる係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が22日に判決を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判はカジノのSchwbVの副委員長が同カジノを相手取って起こしたもの。同カジノは2009年9月、重度障害者を対象にテーブルゲーム・マネージャー2人を募集した。応募者は計26人で、そのなかには原告であるSchwbVの副委員長と、SchwbVの委員長が含まれていた。

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同カジノは、応募者であるSchwbVの委員長と副委員長が採用選考に関与するのは利害抵触に当たるとして、両者に選考作業に参加しないよう要請。両者は実際、選考に関与しなかった。

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同カジノは選考の結果、両者とは別の応募者を採用した。原告であるSchwbVの副委員長はこれを受けて、障害を理由に選考で差別されたと主張。不当な差別を禁じた一般平等待遇法(AGG)に基づく損害賠償請求訴訟を起こした。

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原告は1審と2審は訴えを棄却したものの、最終審のBAGは下級審判決を破棄。裁判をベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所に差し戻した。

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判決理由で裁判官は、SGBⅨ81条1項第6文の規定によりSchwbVは重度障害者の選考に必ず関与しなければならないとしたうえでさらに、SchwbVが選考に関与することを採用募集に応募した重度障害者が拒否する場合はSchwbVを選考に参加させてはならないとするSGBⅨ81条1項第10文の規定を指摘。被告が問題視した利害抵触は、原告であるSchwbVの副委員長が競合する応募者となったSchwbVの委員長を副委員長の選考考査に参加させないよう要求することで回避できたとの判断を示した。

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差し戻し審では、SGBⅨ81条1項第6文に違反した被告の行為がAGGで禁じられた不当な差別に当たるかどうかを検討したうえで、原告に損賠請求権があるかを審査するよう命じている。

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