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2014/4/9

総合 - ドイツ経済ニュース

最低賃金法案を閣議決定 一律8.5ユーロ、18年以降は金額引き上げも

この記事の要約

ドイツ政府は2日の閣議で、最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)を了承した。アンドレア・ナーレス労働相が作成した原案に比べ例外規定がやや拡大されている。同法案は今後、連邦議会(下院)と州の代表で構成される連邦参 […]

ドイツ政府は2日の閣議で、最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)を了承した。アンドレア・ナーレス労働相が作成した原案に比べ例外規定がやや拡大されている。同法案は今後、連邦議会(下院)と州の代表で構成される連邦参議院(上院)で可決され、来年1月1日付で施行される予定だ。

ドイツには全国・全業界一律の最低賃金が存在しない。労使が政治の介入を排して労働条件を自主的に定める制度、「労使協定の自律(Tarifautonomie)」が深く根づいているためで、法定賃金はこの制度に抵触するとみなされてきた。

だが、経済競争力の強化に向けて2000年代の前半に行われた構造改革(アジェンダ2010)の副作用として低賃金セクターで働く被用者が増えたことで状況が変化した。構造改革は熟練技能を持たない長期失業者が労働市場に足がかりを得るという点では一定の効果があったものの、フルタイムで働いても生活に必要な収入を稼げない就労者が発生するという問題も生み出したためだ。

与党はこうした事態を受け、昨年11月の政権協定に全国・全業界一律の最低賃金導入を盛り込み、金額を8.5ユーロ(時給)とすることを取り決めた。

最低賃金は来年1月1日から導入される。ただ、労使協定で独自の最低賃金を取り決めた業界では16年末まで8.5ユーロ未満の賃金が認められる。このため、全業界を拘束する最低賃金が導入されるのは17年1月からとなる。

1年以上の長期失業者に対しては就職後6カ月間、最低賃金を適用しなくてもよい。賃金水準が高いと就職できなくなるケースが多いためだ。ナーレス労働相が作成した法原案では、最低賃金が適用されない長期失業者を、連邦雇用庁(BA)から賃金補助を受給している者に限定していたが、批判があったため法案に盛り込まれなかった。

最低賃金の額は18年以降、労使の代表で構成される「最低賃金委員会」が専門家の助言を受けて決定する。

欧州連合(EU)では加盟28カ国中21カ国で全産業を拘束する最低賃金が法律で定められている。そうした制度がないのはドイツ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、イタリア、キプロスの7カ国に限られる。