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2014/4/16

総合 - ドイツ経済ニュース

内需主導で景気加速=春季予測、最低賃金と年金改革は批判

この記事の要約

Ifoなど有力経済研究所は10日に公表した共同作成の春季経済予測で、ドイツ経済の回復が内需主導で加速するとの見方を示した。景気は昨年下半期から改善が続いており、この傾向は予測の対象期間である来年まで続くと予想。国内総生産 […]

Ifoなど有力経済研究所は10日に公表した共同作成の春季経済予測で、ドイツ経済の回復が内需主導で加速するとの見方を示した。景気は昨年下半期から改善が続いており、この傾向は予測の対象期間である来年まで続くと予想。国内総生産(GDP)成長率が2013年の実質0.4%から14年は1.9%、15年は2.0%へと大きく上昇するとみている。政府が打ち出した全国・全業界一律の最低賃金導入と早期退職を誘発する年金制度改革については経済のマイナス要因だと批判した。

主要経済研究所は春と秋の年2回、経済予測を共同作成し、政府に提出している。

予測はまず世界経済の現状に言及。新興国では昨年夏以来、資本流出と通貨の下落が続いているものの、先進国では景気が良好だとの見方を示した。特に米国が好調で、長期の低迷が続いたユーロ圏も景気後退局面から緩やかな回復に向かっているとしている。

先進国で成長率が高まり、新興国で減速する傾向は今後も続く見通しで、予測は14年の世界経済成長率が2.9%、15年が同3.1%に上るとしている。

経済のリスク要因としては新興国の資本流出・通貨下落のほか、ユーロ圏の低インフレ率を挙げた。ただ、ユーロ圏がデフレに陥る懸念は小さく、景気回復とともにインフレ率が上昇に転じると予想している。

ドイツについては雇用拡大、企業・消費者景況感の改善など景気指標が良好だと指摘。内需主導の経済成長が加速するとの見方を示した。

景気の最大の押し上げ要因はこれまで同様、個人消費で、今年1.5%、来年1.8%増加するとみている(物価調整後の実質ベース)。また、各種のアンケート調査で企業の投資意欲が高まっているとして、設備投資が今年、3年ぶりに増加に転じるとの予想を示した。増加幅は今年5.6%、来年8.4%としている(同)。住宅投資は歴史的な低金利を追い風に今後も拡大が続く見通しだ。

一方、外需は今年も来年も経済成長に寄与しない可能性が高い。輸出成長率は昨年の0.8%から5.9%に上昇するものの、内需拡大を背景に輸入がより大きく伸びるためだ。今年と来年の輸入成長率をそれぞれ実質6.1%、7.2%と予想している。

インフレ率については今年、1.3%に低下するとみている。エネルギー価格の下落が物価水準を強く押し下げているため。エネルギーを除いたコアのインフレ率は1.6%に上ると予想している。

最低賃金は15年1月の導入を予定している。額は1時間当たり8.5ユーロ。

予測は、最低賃金が適用されると、生産性の低い職種を中心に同年は20万人の雇用が失われ失業者数がやや増加するため、GDP成長率が0.1%押し下げられるとみている。

失業者が増加するにもかかわらず、就労者数は15年も拡大する見通し。ドイツ経済の好調を受けて移民の増加が続くと予想されるためだ。

政府は公的年金の保険料納付期間が45年以上の被保険者について、支給額の減額なしに年金を受給できる年齢を63歳に引き下げるルールの導入を目指している。これは少子高齢化の進展を受けて年金受給開始年齢を引き上げた構造改革に大幅な修正を加える措置で、年金財政の悪化と企業の人材不足の深刻化につながると懸念されている。予測も「平均余命の上昇に年金保険制度を適用させる取り組みを阻害する」と批判した。

予測はロシア・ウクライナ問題にも言及。ロシアへの経済制裁が実行されると、ロシア産石油・天然ガスが主な対象となり、ドイツもロシアも大きな影響を受けるとの見方を示した。