妊娠中および産後4カ月以内(母性保護期間)の被用者を解雇することはできない。これは母性保護法(MuSchG)9条1項に記されたルールであり、雇用主が妊娠の事実を知らずに解雇通告を行った場合は当該被用者が妊娠していることを同通告書の送達後2週間以内に伝えれば無効となる。母性保護期間中であるにもかかわらず解雇する場合は、労働保護局の特別許可を受けなければならない。
これらの規定への抵触を繰り返すことは違法な女性差別に当たる――。そんな判断をベルリン・ブランデンブルク州労働裁判が9月の判決(訴訟番号:23 Sa 1045/15)で示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は弁護士事務所に勤務する女性が同事務所を相手取って起こしたもの。同女性は試用期間中に解雇通告を受けたため、同通告を受け取った直後に母子手帳(Mutterpass)を示し妊娠中であることを明らかにした。同事務所は労働保護局の特別許可も受けておらず、裁判で解雇無効が確定した。
それにもかかわらず同事務所は数カ月後、母性保護期間中の同女性に対し再び解雇を通告した。このときも労働保護局の特別許可を受けていなかった。
原告女性はこれが一般平等待遇法(AGG)で禁じられた女性差別に当たると判断し、AGGの規定に基づく慰謝料支払いを求めて提訴。1審のベルリン労働裁判所は原告勝訴を言い渡し、2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁も1審判決を支持した。被告弁護士事務所は原告の母性保護期間は終了したと思って解雇通告したと主張したが、受け入れられなかった。
最高裁への上告は認められておらず、判決は確定した。