欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/30

EU産業・貿易

EBAなど金融監督3機関の運営資金、欧州委が金融機関への課税を検討

この記事の要約

EU市場の銀行、証券、保険市場を管轄する3つの監督機関について、域内の金融機関に対する新たな課税や分担金で運営費を賄う案が検討されているもようだ。欧米メディアが欧州委員会の内部資料をもとに報じた。欧州委は現在、EUの統一 […]

EU市場の銀行、証券、保険市場を管轄する3つの監督機関について、域内の金融機関に対する新たな課税や分担金で運営費を賄う案が検討されているもようだ。欧米メディアが欧州委員会の内部資料をもとに報じた。欧州委は現在、EUの統一的な金融監督制度を担う各機関の運営体制や権限の範囲について見直しを進めており、数カ月以内に報告書を公表する見通しという。

欧州委が財源の見直しを進めているのは、金融危機の再発防止を目的として導入された欧州金融監督制度(ESFS)に基づき、EUが2011年1月に立ち上げた欧州銀行監督庁(EBA)、欧州証券市場監督庁(ESMA)、欧州保険企業年金監督庁(EIOPA)の3機関。現在はそれぞれ運営資金の60%が加盟国からの拠出金、残り40%がEU予算で賄われている。

ロイター通信が入手した報告書の草案によると、欧州委は「EUおよび加盟国が直面している財政上の制約を考えれば、金融監督機関の運営費の財源を見直す必要がある。可能であればEUと加盟国からの拠出を廃止することが望ましい」と指摘している。ただ、金融機関に課税する場合の税率や分担金の規模には言及していない。また、EUのマクロプルーデンスを担う欧州システミックリスク理事会(ESRB)は見直しの対象に含まれていない。

一方、欧州委はEUレベルで金融市場に対する監視を強化する必要があるとして、EBAをはじめとする監督機関の権限拡大を提言している。具体的にはシャドーバンキング(影の銀行)による取引やベンチマーク指数の監視、清算・決算機関の監督などが含まれている。

EU機関の運営資金を金融機関に拠出させることは納税者の負担軽減につながるため、加盟国は欧州委の提案を支持する公算が大きい。しかし、英国はすでに金融当局の運営資金を国内で活動する金融機関に負担させており、EUの方針転換による新たな負担増に対する業界側の反発が予想される。