欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/29

EU産業・貿易

EUとカナダのCETA交渉が妥結、16年に協定発効へ

この記事の要約

EUとカナダは26日、貿易自由化に加え、投資や知的財産権など広範な分野で経済協力関係の強化を目指す包括的経済貿易協定(CETA)の締結に向けた交渉が妥結したと発表した。CETAはEUにとって主要8カ国(G8)と結ぶ初めて […]

EUとカナダは26日、貿易自由化に加え、投資や知的財産権など広範な分野で経済協力関係の強化を目指す包括的経済貿易協定(CETA)の締結に向けた交渉が妥結したと発表した。CETAはEUにとって主要8カ国(G8)と結ぶ初めての自由貿易協定(FTA)となるとともに、米国との環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の「ひな形」になるとみられている。合意書の最終的な見直しと翻訳作業を経て、欧州議会とEU加盟国およびカナダ各州で批准手続きに入る。双方は来年中に正式署名する見通しで、2016年の協定発効が見込まれる。

EUとカナダは2009年10月にCETA交渉を開始した。当初は12年末の妥結を目指していたが、農産品の市場アクセス、カナダ製自動車に対する関税の低減、政府調達へのアクセス改善などをめぐって調整が難航。EUにとってより重要な米国や日本との協定に注目が集まるなか、カナダとの交渉は一時こう着状態にあったが、昨年10月に欧州委員会のバローゾ委員長とカナダのハーパー首相がブリュッセルで会談し、CETA締結で基本合意した。双方はその後、投資家保護や農産品の輸入割当など残る課題について詰めの交渉を行い、8月に最終的な協定案の取りまとめ作業を完了していた。

EUとカナダは26日にオタワで開いた首脳会議で協定案の内容で正式合意した。前日にはドイツのガブリエル副首相兼経済・エネルギー相が下院での演説で、投資家保護を目的としたISDS(投資家対国家の紛争解決)条項を排除しなければCETA締結に反対すると発言し、物議をかもした。同条項はある国が法律や制度を変更したことで外国企業が損害を受けた場合、その企業が国を相手に中立的な国際機関に仲裁を申し入れ、賠償を請求できる仕組みで、海外で活動する企業にとってメリットがある一方、国家の規制権限が制限されることで結果的に消費者が不利益を被るとの批判がある。

欧州委のバローゾ委員長は首脳会議後の会見で、ドイツを含むすべての加盟国から協定への全面的な支持を取りつけていると強調。「これまでにドイツから寄せられた公式見解はすべて協定締結を支持する内容のものだ。実際のところ、ドイツが最もISDSの恩恵を受けると考えられる。カナダとの合意文書がすべての加盟国によって承認されると確信している」と述べた。

合意書によると、最大の焦点だった農産品に関してはカナダが92.8%、EUは93.5%の品目で関税を撤廃したうえで、重要品目のうちカナダはチーズなどの乳製品、EUは牛肉、豚肉、トウモロコシの輸入に割当制度を適用し、輸入量が一定の水準を超えた場合に関税を課す。このほかカナダ側は州や自治体レベルでも政府調達で市場開放を進めることや、農産品などを対象とする地理的表示(GI)の保護などで合意した。

EUにとってカナダは12番目、カナダにとってEUは米国に次ぐ2番目の貿易相手。CETAが発効すれば99%以上の貿易品目で関税が撤廃され、欧州委はFTAによってEU・カナダ間の貿易額が23%(約260億ユーロ)増加し、EUの域内総生産(GDP)も年間120億ユーロ拡大すると試算している。