2015/1/14

総合・マクロ

ドイツの最低賃金、ポーランドの運送業者にも適用

この記事の要約

ドイツで年初に施行された最低賃金法が、ポーランドの運送業界に波紋を広げている。発着地にかかわらず、ドイツ領を走った時間について、運転手にドイツの最低賃金(時給8.5ユーロ)を支払わなければならないためだ。ドイツ関税局への […]

ドイツで年初に施行された最低賃金法が、ポーランドの運送業界に波紋を広げている。発着地にかかわらず、ドイツ領を走った時間について、運転手にドイツの最低賃金(時給8.5ユーロ)を支払わなければならないためだ。ドイツ関税局への届出も必要となり、金銭面でも時間的にも企業の負担が格段に増す。すでに先月の時点でポーランドとハンガリーの欧州議員が欧州委員会に苦情を申し立てており、欧州連合(EU)レベルでの議論に発展する気配も出てきた。

ドイツでは昨年7月に最低賃金法案が成立した。しかし、これが外国企業が雇用するバスやトラックの運転手にも適用されるかどうかは発効直前まではっきりしなかった。

財務省はようやく先月30日、ポーランド大使館の質問に回答する形で、「たとえ発着地が国外でもドイツを通過する場合には、ドイツ領を走っている時間の分だけ最低賃金を支払わなければならない」との見解を明らかにした。ポーランドの運転手の時給は3ユーロ前後で、業者は「払いきれない」と悲鳴を上げる。

また、事前にドイツ関税局のホームページから2ページの申告用紙をダウンロードし、運転手の勤務予定を記入の上、関税局ケルン事務所にファクスで送付する申告義務も生じる。これに伴う事務作業に事業者が忙殺されるのは明らかだ。

さらに、ドイツを走る外国の運送会社の車は1日当たり100万台を超え、事実上、最低賃金が実際に払われているかどうかをチェックする有効な手段はない。この点も問題となりそうだ。(東欧経済ニュース9月24日号「国外下請企業への最低賃金支払い義務付けは違法=欧州裁」を参照)