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2012/6/6

経済産業情報

金の単原子を安定分散、ウィーン工大が成功

この記事の要約

金の単原子を結晶表面に安定的に分散させる新たな手法をウィーン工科大学の研究チームが開発した。連続的に小さなゆがみが生じるよう表面制御された鉄酸化物の結晶格子に金原子を吸着させるのがポイント。ゆがみがいわば輪止めの役割を果 […]

金の単原子を結晶表面に安定的に分散させる新たな手法をウィーン工科大学の研究チームが開発した。連続的に小さなゆがみが生じるよう表面制御された鉄酸化物の結晶格子に金原子を吸着させるのがポイント。ゆがみがいわば輪止めの役割を果たし、金原子が表面上を移動して互いに凝集するのを防ぐという。チームは金触媒の触媒活性引き上げや金使用量の低減につながると期待を寄せる。

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金は化学的に安定しており、塊(バルク)の状態では通常、触媒不活性だが、ナノ粒子にすることで様々な触媒活性を示すことが近年、明らかになってきた。これまでの研究から、金ナノ粒子のサイズを小さくするほど高い触媒活性を示す可能性があることが示唆されており、単原子状態で分散させることが理想だ。

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ただ、ナノサイズの金は極めて凝集しやすい。温度が高いほど金が移動しやすくなるため、低温にすることで凝集は防げるものの、温度が低すぎて触媒反応が起こらないジレンマが生じる。このため、触媒反応が起こる温度で金原子をいかに安定化させるかが大きな課題となっている。

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ウィーン工大の研究チームは、金を単原子吸着しうる素材を模索。試行錯誤の末、磁鉄鉱(Fe3O4)の単結晶にたどり着いた。同結晶表面では酸素原子が波状に歪んで配列しており、金原子が磁鉄鉱表面に当たると酸素原子列同士の距離が近い部分で安定的に吸着を起こすことが観察された。また、一度吸着された金原子は、400度でも安定しており、500度以上で離脱して凝集を起こすこともあわせて確認された。

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研究成果は『Physical Review Letters』に掲載された。

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