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2014/12/10

経済産業情報

医薬品認可が大量取り消しの見通し、印治験会社のデータ改ざんで

この記事の要約

独連邦医薬品・医療機器審査局(BfArM)は5日、国内で販売されている医薬品の認可の大量に停止する見通しを明らかにした。医薬品開発業務受託機関(CRO)大手の印GVKバイオサイエンスが治験データを意図的に改ざんしていたこ […]

独連邦医薬品・医療機器審査局(BfArM)は5日、国内で販売されている医薬品の認可の大量に停止する見通しを明らかにした。医薬品開発業務受託機関(CRO)大手の印GVKバイオサイエンスが治験データを意図的に改ざんしていたことが、仏医薬品安全庁(ANSM)と欧州医薬品庁(EMA)の調査で判明したためだ。データが改ざんされた医薬品は数百件に達するという。

ANSMは今春、インド中南部のハイデラバードにあるGVKバイオの事業拠点で抜き取り検査を実施。対象となった医薬品9種類すべてでデータ改ざんの事実をつかんだ。これを受けてEMAも調査を行い、少なくとも10人以上の同社職員が改ざんに関与していたことを突き止めた。

データ改ざんが明らかになったのは現時点で、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の認可に必要な生物学的同等性試験(BE試験)に限られている。ただ、同社は新薬の治験も世界各国の企業から受託しているため、この分野でも不正が行われてきた可能性を排除できない。

BfArMはGVKバイオによるデータ改ざんを受けて11月、後発医薬品メーカーの事情聴取を開始した。調査の対象となっているのはGVKバイオが08年から14年にかけて行ったBE試験に基づき独販売の認可を得た製品で、計28社の医薬品、合わせて176件が該当している。BfArMはデータ改ざんの事実が確認されれば、認可を停止。新たなBE試験で安全性が確認されるまで販売を禁止する。販売禁止となる医薬品の数と該当する企業の名前は調査の終了後に公開する。

独メーカーではベータファームとヘクサールの製品で治験データに改ざんがあったことが分かっている。ベータファームは『南ドイツ新聞』に、治験に問題があることを知らなかったと回答。アレルギー薬「フェキソフェナジン」で改ざんが明らかになったヘクサールは、販売認可が下りた後にライセンスを取得したとして、不正に関与していないことを強調した。

製薬業界では治験を東欧やアジア、南米などの新興諸国で行う動きが強まっており、医療分野のNGOであるWEMOSによると、新興諸国で実施される治験の件数は年2万件に上る。先進国に比べて治験コストが低く、治験参加者も確保しやすいなどの事情が背景にある。

GVKバイオは日米欧の製薬会社から治験を大量に請け負うCROの有力企業で、顧客数は300社を超える。オランダ、米国、シンガポールにも事業拠点を持ち、従業員数は2,400人に上る。