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2014/12/10

ゲシェフトフューラーの豆知識

アルコール依存症のトラック運転手が事故、解雇は妥当か

この記事の要約

アルコール依存症のトラック運転手が飲酒が原因で仕事中に交通事故を起こした場合、雇用主は解雇を通告できるのだろうか――。この問題をめぐる係争でベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が8月に判決(訴訟番号:7 Sa 852/ […]

アルコール依存症のトラック運転手が飲酒が原因で仕事中に交通事故を起こした場合、雇用主は解雇を通告できるのだろうか――。この問題をめぐる係争でベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が8月に判決(訴訟番号:7 Sa 852/14)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は依存症のトラック運転手が雇用主を相手取って起こしたもの。同運転手は2013年5月、飲酒が原因で交通事故を起こした。血中アルコール濃度は0.64パーミルに達していた。

同社では飲酒運転を明確に禁止していたこともあり、雇用主は5月27日付の文書で原告の即時解雇を通告。念のために解雇予告期間付きの通常解雇も伝達した。原告はこれを不当として提訴した。

1審は原告の義務違反は重大だとして通常解雇を妥当とする判決を下した。これに対し2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁は1審判決を破棄。解雇は不当との判断を示した。判決理由で裁判官は、アルコール依存症が病気であることを前置きしたうえで、病気を理由に解雇できるのは将来的に回復のメドが立たないため業務復帰のメドも立たない場合に限られるとした最高裁(連邦労働裁判所)の判例(予測原則)を指摘。原告は治療を受けたいと考えており、治療を受けていなかった(解雇通告の)時点で解雇を通告したことは不当だと言い渡した。