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2014/12/10

総合 - ドイツ経済ニュース

CO2排出削減幅を最大7,800万トン拡大へ、政府が実行計画を承認

この記事の要約

独連邦政府は3日の閣議で、二酸化炭素(CO2)排出削減に向けた新たな実行計画を承認した。従来計画では国内のCO2排出目標を達成できないことが明らかになったためで、削減量を6,200万~7,800万トン上乗せする。政府は目 […]

独連邦政府は3日の閣議で、二酸化炭素(CO2)排出削減に向けた新たな実行計画を承認した。従来計画では国内のCO2排出目標を達成できないことが明らかになったためで、削減量を6,200万~7,800万トン上乗せする。政府は目標実現に向けて新たな排出削減措置を打ち出すことで、1日にペルーで開幕した国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)で他国にも削減努力を促す狙いだ。

ドイツはCO2排出量を2020年までに1990年比で40%圧縮する目標を掲げている。現時点の削減幅は25%強で、現状では20年時点の削減率が同約32~35%にとどまる見通しのため、不足分の5~8ポイント(排出量にして6,200万~7,800万トン)を穴埋めする。

排出削減に向けては(1)消費者と企業に省エネを促す(2)石炭発電を減らす(3)交通、ごみ処理、農業分野でCO2の排出量を減らす――措置を実施する。

(1)では建造物の熱効率改善に向けた改築や省エネ効果の高い暖房導入、工場設備の排ガスの有効利用に向けた取り組みに税控除や補助金などの措置を適用。20年までにCO2排出量を2,500万~3,000万トン引き下げるとともに、総額700億~800億ユーロの投資を呼び込む考えだ。

省エネに取り組みたい企業に対しては同様の考えを持つ企業とネットワークを形成することを支援する。ネットワークは1つ当たり8~15社からなり、参加各社はコンサルタントの支援を受けながら相互に情報交換を実施し、エネルギー消費量を引き下げていく。参加に当たってはエネルギー消費に関する監査を受けたうえで、具体的な削減目標の設定と削減実現に向けた対策を策定する。各ネットワークの省エネ実現度については毎年、第三者により記録が作成される。

政府は20年までに約500のネットワークが形成されると予想。これにより一次エネルギー消費量が75ペタジュール、CO2排出量が500万トン削減できるとみている。連邦環境省などが実施したパイロットプロジェクトでは成果が出ているという。

税控除措置に伴い税収が年10億ユーロ減少する見通しのため、連邦政府は穴埋め財源の確保に向けて今後、州政府と協議する。来年2月までに合意を図り、同1月にさかのぼって適用する考え。

石炭発電では年440万トン削減へ

発電所が排出するCO2の量はドイツ全体の40%を占める。特に石炭・褐炭発電で排出量が多いため、政府は同発電に伴うCO2排出量の削減幅を従来計画より2,200万トン多い9,300万トンに引き上げる。発電事業者は来年から19年までの5年間、年440万トンのペースでCO2排出削減の拡大(440万トン×5年=2,200万トン)を義務づけられることになる。

交通分野では排出削減量を700万~1,000万トン拡大する考えで、◇自転車・歩行者道を拡充し自動車の利用を減らすよう仕向ける◇官庁職員の出張での自動車利用抑制◇鉄道・河川の貨物輸送強化◇企業の電気自動車(EV)利用に減価償却の優遇措置を適用◇官庁でのEV利用拡大◇電力消費量が少ないELD照明の街灯への大量導入――などを検討している。

欧州連合(EU)欧州委員会のミゲル・アリアス・カニェテ委員(気候行動・エネルギー担当)は独政府の新実行計画を高く評価したうえで、発電セクターのCO2排出削減量が増えると、低迷している排出権価格が一段と下がると指摘。EUの域内排出量取引制度(EU-ETS)を速やかに改革しなければならないと見解を示した。

CO2排出削減に向けた投資を企業に促すには少なくとも1トン当たり20ユーロ以上の排出権価格を維持する必要があるとされるが、ユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じた結果、排出権価格は昨年4月に1トン当たり2.46ユーロの最安値を記録。現在も6ユーロ程度の低水準にとどまっており、EU-ETSを改革して排出権価格を引き上げる必要が出ている。