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2015/2/11

ゲシェフトフューラーの豆知識

長期病休者の職場復帰措置、弁護士などを関与させることは可能か

この記事の要約

年に6週間以上、病気休業する社員がいる場合、雇用主は本人の同意を得たうえでどうすれば職場に復帰できるかを従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)などと共同で検討しなければならない。これは第Ⅸ社会法典(SG […]

年に6週間以上、病気休業する社員がいる場合、雇用主は本人の同意を得たうえでどうすれば職場に復帰できるかを従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)などと共同で検討しなければならない。これは第Ⅸ社会法典(SGBⅨ)84条2項に記されたルールで、「職場復帰マネジメント(Betriebliches Eingliederungsmanagement=BEM=)」と呼ばれる。では、当該社員はBEMの検討・実施に当たって、弁護士など自らが雇った法律の専門家を参加させることがでるのだろうか。この問題をめぐる係争でマインツ州労働裁判所が昨年12月に判決(訴訟番号:5 Sa 518/14)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は保険会社の社員が雇用主を相手取って起こしたもの。同社員は2013年4月14日以降、病気欠勤していた。このため雇用主は同年9月、同社員と話し合いを行い、BEMを実施することで合意した。

同社員はその際、被用者は構造的に弱い立場に置かれているとして、自らが雇った法律補助人(弁護士ではないものの、代理人となることが法律で認められた法律の専門家)をBEMに関与させることを要求。これが受け入れられなかったため提訴した。

原告は1審で敗訴、2審のマインツ州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、BEMに関与する人物・機関としてSGBⅨ84条2項には弁護士など当該被用者の代理人が記されていないことを指摘。これは立法者の意志(Wille des Gesetzgebers)だとの判断を示した。

また、BEMは病気で仕事をできなくなった被用者の雇用を維持する目的で行う善意の措置だとも指摘。当該被用者を保護するという名目で弁護士などをBEMに関与させる必要性はないとの判断も示した。

最高裁への上告は認めなかった。

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