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2015/4/29

経済産業情報

VWピエヒ会長が辞任、権力闘争の敗北で

この記事の要約

欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)は25日、フェルディナント・ピエヒ監査役会長が同日付で辞任すると発表した。同会長は先ごろ、VWグループの実務を統括するマルティン・ヴィンターコルン社長の解任を目論んで失敗。グ […]

欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲン(VW)は25日、フェルディナント・ピエヒ監査役会長が同日付で辞任すると発表した。同会長は先ごろ、VWグループの実務を統括するマルティン・ヴィンターコルン社長の解任を目論んで失敗。グループ内で孤立し辞任に追い込まれた格好だ。監査役会長職は当面、労働側代表のベルトルト・フーバー副会長(金属労組IGメタル前委員長)が代行する。

ピエヒ会長は10日公開された週刊誌『シュピーゲル』のインタビュー記事で「ヴィンターコルン社長に距離を置いている」と発言。同社長の解任に向けて攻撃の口火を切った。だが、VWはヴィンターコルン社長が就任した2007年以降、業績の急拡大が続いていることから、ピエヒ会長に同調する役員はおらず、16日に開催された監査役の臨時幹部会はヴィンターコルン社長への全面的な支持声明を決議した。

その後、ピエヒ会長とヴィンターコルン社長の関係を修復させる試みもあったようだが、ピエヒ会長は同社長の解任をなおも画策しているとする消息筋の情報が23日に報道された。同会長は報道内容を否定したものの、これが辞任の引き金になったもようだ。VWは25日の声明で、協力関係に必要な相互信頼の喪失が会長辞任の理由であることを明らかにした。

同会長は妻のウルズラ・ピエヒ監査役とともに、VWグループの全役職から同日付で退いた。

次期会長候補は現時点で不明。ピエヒ氏のいとこでVWの大株主でもあるヴォルフガング・ポルシェ監査役を適任者とする見方もあるが、ポルシェ監査役は今回の権力闘争でヴィンターコルン社長支持に回っており、ピエヒ氏が反発するとみられる。

ピエヒ家はポルシェ家とともに、持ち株会社ポルシェ・アウトモビルを通してVWの過半数株(50.7%)を握っていることから、フェルディナント・ピエヒ氏は今後も役員人事や経営方針に介入する可能性がある。また、同持ち株会社の解消に動いたりVW株を売却してVWを揺さぶるとの観測もある。