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2015/4/29

総合 - ドイツ経済ニュース

ドイツ銀が組織再編、ポストバンクは連結外に

この記事の要約

ドイツ銀行は27日、中期経営戦略「シュトラテギー2020」の概要を発表した。収益力を向上させるとともに、金融規制の強化に対応することが狙いで、リテール(小口金融)子会社ポストバンクの過半数株を放出して連結対象から除外。投 […]

ドイツ銀行は27日、中期経営戦略「シュトラテギー2020」の概要を発表した。収益力を向上させるとともに、金融規制の強化に対応することが狙いで、リテール(小口金融)子会社ポストバンクの過半数株を放出して連結対象から除外。投資銀行部門でも収益力の低い事業を整理して規模を縮小する。また、業務・サービスのデジタル化を強化する一環で、国内支店の約3割を廃止する。

ドイツ銀はリーマンショックに端を発する業界の構造転換と銀行規制強化を踏まえ、2012年9月に経営戦略「シュトラテギー2015+」を打ち出した。15年末までに年間コストを45億ユーロ圧縮するほか、税引き後ベースの自己資本利益率(ROE)で12%以上を確保するなどの目標を設定した。コスト圧縮は計画通りに進んでおり、14年末までに33億ユーロを達成。今年は12億ユーロが上乗せされ目標の45億ユーロを達成できる見通しだ。

だが、大幅なコスト削減にもかかわらず、利益率は低迷。15年1-3月期(第1四半期)のROEは3.1%と目標の4分の1の水準にとどまった。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)など国際的な指標金利の不正操作に関与し巨額の制裁金を科されたことのほか、金融規制の強化でコストが膨らんでいるためだ。

今回の中期経営戦略はこうした現状を踏まえたもので、ROE目標を10%に引き下げた。コストは新たに年35億ユーロを削減する。

レバレッジ比率引き上げへ

ドイツ銀行は今回の組織再編計画を策定するに当たって、(1)子会社ポストバンクを含むリテール事業全体を分離・上場し、経営資源を投資銀行(CB&S部門)、富裕層向け資産管理(AWM部門)、および企業・金融機関向けの決済や国際貿易金融サービス(GTB部門)に絞り込む(2)ポストバンクをドイツ銀に完全統合する(3)ポストバンクのみを売却し、ドイツ銀のリテール部門は手元に残す――という3つのシナリオを検討した。当初は(1)が有力視されていたものの、リテール事業から全面撤退するとドイツ本国との結びつきがなくなることから採用されなかった。リテール顧客の預金は投資銀行業務の資金繰りに役立つことも大きな材料となった。リテール事業を手元に残すため同行は今後も、あらゆる分野の金融業務を手がけるユニバーサルバンクであり続ける。

(2)はポストバンク本社の廃止や支店の整理を伴い大規模な人員削減が避けられないことから、従業員代表やサービス労組Verdiの抵抗が強くハードルが高かった。

ドイツ銀はポストバンクへの出資比率を16年末までに現在の96%強から50%未満に引き下げて連結対象から外し、将来的には全面撤退する考えだ。現在は市場での放出を念頭に置いている。

ドイツ銀は2009年、投資銀行事業への依存度を引き下げるため、国内店舗数が最も多いポストバンクに資本参加。10年に買収した。

買収から5年足らずで同子会社を放出する理由の1つは、ポストバンクの顧客層がドイツ銀のリテール商品に関心を示さず、買収の相乗効果が出ていないことだ。ドイツ銀のリテール顧客に比べて全般的に所得水準が低く、入念に説明して売り込むような高度な金融サービスを必要としていないことが背景にある。

だが、より重要な理由はポストバンクを抱え続けると、将来の金融規制に対応できなくなる恐れがあるということだ。

ドイツ銀は今回、総資産に対する自己資本の比率であるレバレッジ比率を、今年第1四半期の3.4%から5%以上に引き上げる目標を打ち出した。新銀行自己資本規制のバーゼル3では最低基準として3%が設定されているが、これが4%以上に引き上げられる公算が高まっていることから、同行は5%以上を目標に据えた。

これを実現するには増資と総資産の縮小という2つの方法があるが、同行は13年と14年に合わせて約110億ユーロの巨額増資を行っているため、新たな増資を行うことは事実上できない。

ポストバンクを連結対象から外せば総資産が減り、レバレッジ比率が上昇。将来の同比率規制に対応しやすくなる。

レバレッジ比率の向上に向けては、投資銀行部門の資産も名目で約2,000億ユーロ、実質で1,300億~1,500億ユーロ圧縮する。

大規模な人員削減見通し

業務・サービスのデジタル化を推し進めるのは、個人顧客と企業顧客の双方でそうした需要が高まっているためで、最大で10億ユーロを投資する。これに伴い国内に現在およそ750カ所ある支店のうち200カ所を17年までに閉鎖する。ユルゲン・フィッチェン共同最高経営責任者(CEO)は記者会見で、オンラインバンキングの普及を受けて実店舗の利用者が減少していることを指摘。若年層では利用率が20%に過ぎないと述べた。

伊銀ウニクレディトの独子会社ヒポ・フェラインス銀行は昨年、国内店舗(約580カ所)の40%に当たる240カ所を15年までに廃止し、オンラインバンキングやビデオ会議方式の顧客相談業務を拡充していく計画を打ち出しており、ドイツ銀も追従した格好だ。コンサルティング大手ベインによると、ドイツにあるすべての銀行の支店およそ3万1,000カ所の3分の1は今後数年で閉鎖される見通しという。

ドイツ銀は国外の事業拠点も整理・統合する方針。国内支店の閉鎖も含めると人員削減の規模は1万人のケタ台に上るとみられる。3月末時点の行員数はポストバンク(1万5,000人)を含めて9万8,000人。

AWM、GTBの2部門では事業を拡大する方針で、総額15億ユーロ以上を投資する。

狭義の中核自己資本比率(CET1比率)は12年と13年の増資で大幅に改善しており、14年末時点で11.7%に上った。今年3月末には11.1%に低下したものの水準はなおも高く、同行は今後も保っていく考えだ。