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2010/2/10

経済産業情報

水道料金設定で最高裁が当局の権限確認、今後は料金低下も

この記事の要約

ヘッセン州の水道供給会社Enwag(ヴェツラー)が同州の独禁当局から29.3%の水道料金引き下げを命じられたことを不服として起こしていた裁判で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は2日、原告の訴えを却下し、「州独禁当局には […]

ヘッセン州の水道供給会社Enwag(ヴェツラー)が同州の独禁当局から29.3%の水道料金引き下げを命じられたことを不服として起こしていた裁判で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は2日、原告の訴えを却下し、「州独禁当局には水道料金を引き下げる権限がある」との判決を下した(訴訟番号:KVR66/08)。水道業界では地域ごとに供給事業を行う小規模事業者が多いため、各州の独禁当局(州経済省傘下)に監督が任されている。これまで当局が料金設定に介入するケースはまれだったが、今回の判決を受けてノルトライン・ヴェストファーレン州やニーダーザクセン州も監督強化方針を打ち出しており、水道料金が全国的に引き下げられる可能性が出てきた。

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裁判官は今回の判決で、州独禁当局が水道料金の引き下げを命じる際に、これまでのような包括的なコスト分析は必要なく、似たような経営体制の同業他社の料金と比較するだけで十分だとの判断を示した。また、「供給地域のヴェツラーは山地が多く、追加コストがかかる」と反論したEnwagに対しては、「コスト証明は当局ではなくEnwagがすべきことだ」と述べ、当事者に証明責任があることを明確化した。

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ドイツには水道供給会社が約6,200社あるが、1社1地域の供給体制が多く、競争はほとんどない。消費者センター全国連合会(VZBV)によると、全国の水道料金の差は最大で300%に上る。今回の判決を機に料金設定の見直しとコスト削減を迫られると、小規模供給会社は淘汰され、市場再編の動きが出てくる可能性もある。すでに仏水道大手Veoliaはドイツでの同業買収に関心を示しているという。

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ただ、州独禁当局の管轄下にあるのは民間企業だけで、水道会社の52%を占める地域供給公社は料金規制の対象外となっている。このため、VZBVはすべての水道会社を対象とする全国レベルの規制当局を設立するよう政府に求めている。

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