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2010/7/7

総合 - ドイツ経済ニュース

公的健保の料率、0.6%引き上げで与党合意

この記事の要約

独与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の3党は6日、医療保険制度の改正案で合意した。公的健康保険の赤字を解消するのが目的で、労使折半の保険料率を現在の14.9%から来年15.5%へと引き […]

独与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の3党は6日、医療保険制度の改正案で合意した。公的健康保険の赤字を解消するのが目的で、労使折半の保険料率を現在の14.9%から来年15.5%へと引き上げるほか、各健保が追加徴収できる保険料の上限枠も撤廃する。これにより、CDU/CSUと社会民主党(SPD)の2大政党からなる第1次メルケル政権が2009年1月に導入した健康基金制度はわずか2年で修正される見通しだ。経済界からは企業の人件費が膨らむとの批判が出ている。

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公的健保の保険料は2008年まで、各健保組合が料率を決め、被保険者から直接、徴収していた。これに対し09年から始まった健康基金制度では料率を政府が一律で定め、健康基金が一括徴収している。料率は運用開始時の09年上半期は手取り収入の15.5%だったが、経済危機を受け下半期から14.9%に引き下げられた。

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公的健保の歳出は社会の高齢化を背景に年5%のペースで拡大し、来年は健保の赤字額が計110億ユーロに達する見通しで、政府はこのうちの35億ユーロを健保の歳出削減を通して実現する考え。特に製薬会社には総額20億ユーロ以上を負担させる。残りの75億ユーロについては保険料率の引き上げ(60億ユーロ)と追加保険料で穴埋めする。

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保険料率が引き上げられると、被用者の負担額は手取り収入の7.9%から8.2%に、雇用主の負担も同7.0%から7.3%へと引き上げられる。フィリップ・レスラー保健相(FDP)は「雇用主の料率は7.3%に固定し、これ以上には引き上げない」として経済界に理解を求めている。これに対し独雇用者団体連合会(BDA)のディーター・フント会長は、企業の人件費負担はドイツ全体で20億ユーロ以上、膨らむと指摘。景気回復の腰が折れかねないと懸念を表明した。

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保険料の追加徴収は健康基金制度に付随する形で導入されたルールで、健康基金から配分される保険料収入ではコストをカバーできない組合が利用する。被保険者から追加徴収できる額は現在、所得の1%が上限(ただし最高額は月37.5ユーロ)で、月8ユーロ以下であれば被保険者の所得の大小にかかわらず一律の金額を徴収できる。

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与党は追加徴収の額を制限するこうした措置を全面的に撤廃し、金額の設定を各健保のフリーハンドに委ねる方針だ。

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追加徴収額を自由に設定できるようになると、健保は赤字を回避し、経営破たんの恐れも小さくなる。だが、同時に健保のコスト削減努力も弱まりかねず、医療費膨張の抑制という高齢化社会の課題からは一歩、後退する可能性がある。

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