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2010/7/21

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委員にメアド開設の請求権、最高裁が認定

この記事の要約

従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)の活動に必要な経費は雇用主が負担しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)40条1項に記された決まりである。同条2項にはさらに「事業所委員会の会 […]

従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)の活動に必要な経費は雇用主が負担しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)40条1項に記された決まりである。同条2項にはさらに「事業所委員会の会議、面会、業務遂行のために、雇用主は必要な広さの空間、物品、情報・通信機器ならびに事務要員を提供しなければならない」と明記されている。

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今回は同項に記された「情報・通信機器」をめぐる係争を取り上げてみたい。ドイツでは近年、これに関する裁判が増えているためである。IT技術の急速な発展を背景に、事業所委の活動に必要で雇用主が提供しなければならない情報・通信機器の範囲を時代に見合った形で見直さなければならなくなっていると言えるだろう。

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これまでの係争ではすでに、パソコンとインターネットの利用が事業所委員の権利として確定しており、今回取り上げる裁判ではメールアドレスの開設も事業所委員は請求できるかが、判例のうえでの重要な争点となった。

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今回の裁判は事業所委員会が要求したネット利用とメアド開設を雇用主が拒否したために起きたもの。このうちネット利用に関しては係争中の2010年1月に最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が別の裁判で利用権を認める判決(訴訟番号:7 ABR 97/08)を下したため、争点としての意義は事実上なくなった。

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では、メアドに関してBAGはどのような判決を下したのだろうか。結論を先に書くと、事業所委員会の業務遂行にどのような情報・通信機器が必要かは同委が判断する事柄だとして、メアド開設の請求権も認めたのである。

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判決理由で裁判官は、事業所委員会は何が必要かを判断する際に雇用主の利害、特にコストを考慮しなければならないと指摘。そのうえで、事業所委員会の各メンバーにはすでにパソコンが支給されており、これに新たにインターネットと電子メールの利用が追加されても、雇用主のコスト負担はほとんど増えないとの判断を示した。

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